
【業務内容】
主に窓やドア、カーテンウォールなどの建築用アルミ製品や樹脂製品の開発・製造・販売
【利用用途】
営業管理(顧客管理、案件管理、プロジェクト管理など)
YKK AP建材有限公司は、 60年以上の歴史を持つ日本発の建材ブランドとして、 主に窓やドア、カーテンウォールなどの建築用アルミ製品や樹脂製品の開発・製造・販売を行っています。中国国内向けには、アルミ・アルミ形材の断熱商品を設計・製造・販売し、グローバルな製造供給拠点として、窓やカーテンウォール、部品などを製造。また日本向けには樹脂バー材も生産し、効率的な生産体制と供給ネットワークで多様なニーズに対応した事業を展開しています。そして近年は中国内需の拡大に対応し、営業管理や業務効率化を積極的に推進しています。
今回は、中国内需向け営業管理の仕組み作りに携わってこられた岡田氏にkintone導入の背景や活用効果についてお話を伺いました。

YKK AP建材有限公司
営業統括部 部長
岡田 裕作 氏
YKK AP株式会社に入社後、情報システム部門に配属され、営業系システムの企画・開発・保守などに携わりました。2014年に初めて上海に赴任し、中国国内向け営業管理の仕組みづくりやkintone導入プロジェクトを牽引。その後、2021年にはインドネシアに赴任し中国を離れましたが、2024年より再び上海にて現職。現在は営業統括部にて、内需営業の日本側責任者を務めている。
岡田氏が中国で情報システム部門に赴任した2014年当時、事業再構築・業務見直しが求められていました。2000年頃に中国へ進出した同社は、日本向けにコストを抑えた商品を輸出する事業が中心だったが、元高・人件費増によって輸出メリットが減少。そこで中国内需の事業拡大要求を受けて2007年に国内向け事業を立ち上げたが、市況の影響を受け、厳しい状況が続いていた。一方で、IT課題としては、中国で独自に構築した生産管理や会計システムの償却費が圧迫している状況で、営業系システムへの投資不足が指摘されていた。このような状況の中、単純なシステム刷新だけでなく、業務改革を含めてトータルで対応する必要があり、システム出身者としては非常に苦しい状況だった。
そこで、岡田氏は2つの方向性で動き始めた。まず、IT投資に対する経営層の理解を促すことだ。各社総経理から「ITの償却費が高い。毎年の収支を圧迫している。」という指摘が多くあった。そこで償却費用をきちんと数値化し、4年〜8年という中長期スパンでどうなっていくか、どういう影響を与えていくかを可視化した。そこで売上に対して1%以下の投資に抑えるようにして、予算を確保した。加えて、細かい方法論は現場に任せてもらうことも狙いだった。現地担当者に投資対効果責任を問わない環境作りを行い、スムーズな運用体制の確保に努めた。
次に、環境変化に柔軟に対応できるIT構成の構築だ。営業系システムの再構築に当たり、販売管理など基幹システムはパッケージで構築し、フロント側のシステムはSaaSを活用して事業環境の変化に柔軟に対応し、ノーコードツールやアジャイル開発を取り入れ、事業部門主体で現場に任せた運用を目指した。
本格的な業務再編に取り組む中で、岡田氏は業務改革の旗振り役としてプロジェクトを牽引。営業系のルール作りを進める中で、効率化だけでなくガバナンスを担保する方法、例えば営業プロセスの可視化やターゲット顧客情報の数値化などを模索した。投資対効果を厳格に考えすぎない、経営レベルでのガバナンス強化を目指した。

開発方針が固まり、システム選定の段階となった。方針としては、まずは現場主導で開発を進められること、そしてサポート体制が充実していることが要件だった。そこで、ノーコードツールであり、かつ中国に拠点があってサポートを受けることができる「kintone」を選定、2017年に導入した。
「本来であれば、他社製品と比較して相見積りを取れればよかったですが、当時はkintoneしか選択肢がなく、即決でした。」(岡田氏)
現場主導で開発を進めていく上で、まず開発担当者をアサインした。選定基準はIT経験を問わず、「人柄重視」。人柄が抜群な楊氏を抜擢し、開発を一本化した。岡田氏と役割分担し、二人三脚でのkintone導入プロジェクトがスタートしました。

まずは物件管理アプリの構築から着手した。kintoneの利用推進を目的に、二人で全支店を訪問して拠点メンバー向けに説明会を開催するなど、地道な活動も行った。開発は楊氏に窓口を一本化し、IT出身者の岡田氏からすると手を出したいこともあったそうだが、ぐっとこらえて彼女に任せた。一方で、やりきる姿勢を示すため、岡田氏自らが承認フローに入り込み、紙での旧運用は一切認めない運用を徹底した。二人の役割分担がうまく機能したことで、当初半年を見込んでいた導入期間がわずか3ヶ月で完了した。
従来は紙ベースで煩雑だった営業案件の承認プロセスを、kintone上での一元管理に変更。以前は紙やエクセルでの管理だったため、まずはマスタデータの整備からスタートした。構築にあたっては、名寄せ作業やフォームの不一致による情報集約作業のデータ移行作業がとても大変だったそうだが、ここを乗り越えて運用が始まると業務効率が格段に高まり、営業活動やプロジェクト管理のデータが蓄積され、粗利率別のプロジェクト管理や営業行動計画、商談記録などの集計・分析が容易になった。

常に最新の情報が各マスタから連動し、遠方の支店の情報もリアルタイムで確認でき、情報共有のスピードが向上した。
また、承認プロセスの徹底も実践でき、ガバナンス面での強化も実践。

kintone導入当初、楊さんが中心になって構築したアプリ
営業本部側からは導入に対して高い評価を受けている。具体的には以下の声があがってきた。
・承認プロセスのルール徹底によるガバナンス向上
・情報の細分化がしやすくなり、データ集計・分析の迅速化
・情報共有のスピードアップ
また、導入から約8年が経過し、現在の投資費用はランニング費用を含めて約1,000千元にのぼるが、十分に投資に見合った効果が得られていると判断している。うれしい誤算として、当時楊さんと共にシステム構築を担当していた本部のナショナルスタッフが、業務改善や政策立案にまで踏み込んだ議論ができる人材へと成長したことが挙げられる。
「当時、細かいところまで業務設計をしてくれた本部のスタッフ達が、戦略を立てる議論をする際もついてきてくれ、とても良い提案をしてくれるようになった。経営層の人材が育った点は非常に良かった点です。」と岡田氏は語った。
2021年から岡田氏が赴任したインドネシアでも、kintoneを導入して内需営業管理の仕組み作りを推進した。国を超えて、現場主導の業務改革にkintoneは貢献している。
これまでの運用でkintoneに蓄積されたデータをまだまだ十分に活用できていない実感があるため、今後はAI連携サービスを活用して利活用を進めていきたい。また、これまで開発を楊さん一人に任せて進めてきたので、今後は複数のスタッフを育成し、さらに現場の自主的な改善活動を拡げていきたい。
最後に、岡田氏からkintoneの導入を検討中の方、これから導入される方に向けて3つメッセージをいただいた。
「1つ目は、『担当者を決める』こと。考えが柔軟な若手人材(もちろん人柄重視で!)がおすすめです。2つ目は、担当を決めたら『現場のナショナルスタッフに任せきる』こと。つい手を出してしまいたくなるが、ぐっと堪えて気楽に待ちましょう。最後に、『まずはやってみる』こと。時間をかけて要件を明確にする前に、任せてまずやらせてみてください。きっと事業や組織の成長を加速させる大きなきっかけとなるはずです。」と岡田氏は最後に締めくくった。