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山善(深圳)貿易有限公司 様

Excelの「サイロ化」から全員共有へ、大規模企業がデータ連携の壁を打ち破るDX戦略

【業務内容】

工作機械、切削工具アクセサリ、精密測定機器、電気機械自動化および自動化インテグレーションに関する販売事業。

【利用用途】

勤怠管理、研修管理、営業成績管理、文書管理、行政手続申請、人事申請、経費申請、目標評価管理、その他資産管理

事業紹介

株式会社山善は日本の上場商社で、20年以上前から中国市場に参入し、上海と深圳に現地法人を設立。現在中国全国に20以上の支店と事務所を持ち、社員400人以上、技術者100人以上が在籍している。

中国では主に工作機械、切削工具付属品、精密測定機器、電気機械自動化および自動化インテグレーションの販売事業を展開している。また、強力な技術チームを有し、設備の選定からプロセスソリューション、切削工具と治具のソリューション、非標準的な改造、自動化ソリューションなど、一連の技術サービスとターンキープロジェクトを提供できる。

山善は、豊富な製品ラインナップと専門的な技術力で、顧客へのサービス提供に注力している。中国の製造業にとって最高のトータル・ソリューション・プロバイダーとなれるよう取り組んでいく。



導入前の課題

中国市場に参入して20年以上、山善は一貫して事業拡大に注力し、社員数や支店数を拡大し続けてきた。しかし、2018年以前、山善(深圳)の業務承認フローは、エクセルや従来の紙ベースの押印・承認に頼っていた。

この承認フローが非効率で、書類の処理が遅いだけでなく、漏れや遅れも生じやすい。特に部門間や地域間の連携において、情報共有が難しく、データの伝達も滞り、業務効率や経営の透明性も著しく低下した。

また、営業、業務、技術、管理の各部門がサイロ化しており、データはエクセルなどのツールに分散していたため、効率的な引継ぎや共有が困難だった。共通プラットフォームもなく、新入社員研修や業務フローなどの改善効率も低かった。

「紙ベースの承認フローは、まるで自転車で高速道路を進むようなものだった」、管理部の李宏副部長は移行前の苦境をこう語る。

山善(深圳)貿易有限公司
管理部 副部長
李 宏 氏
人事、総務、財務、法務を担当。プロジェクトリーダーとして、kintoneを活用した経営管理システムの構築を積極的に推進。

導入の決め手

当初、kintoneシステムをいち早く導入したのは台湾山善だった。台湾山善は、kintoneによる電子承認を実現し、業務効率の大幅な向上と運用コストの削減を成し遂げた。その後、台湾山善の元管理部長が山善(深圳)に異動し、台湾での成功経験を深圳に持ち込み、深圳の承認フローにおける課題に対応すべく、山善(深圳)でのkintoneの導入と運用を推進した。
2019年に本稼働したkintoneのおかげで、2020年のコロナ期間にも効率的な在宅勤務を実現でき、事業の継続性を担保し、ワークフローの混乱を回避できた。

導入の効果

李宏副部長:「kintoneを使用することにより、①承認、②情報共有、③部門間のデータ転送という3大革新を実現できた」。

従来の紙ベース承認を廃止し、30種類以上の業務で電子化を実現し、作業効率を大幅アップ

2019年、山善(深圳)はkintoneシステムを正式に導入し、承認、経費精算、勤怠管理、業務管理などあらゆるシーンを含め、30種類以上の紙帳票を電子化した。
異なる部門やさまざまな業務シーンのニーズを満たすため、山善(深圳)は承認フローを複数のレベルに細分化している。例えば出張申請の場合、国内か海外かによって承認フローが異なる。また、休暇申請の場合は日数によって承認フローが異なる。そして残業申請についても、平日・週末・祝日によって承認フローが異なる。さらに、1つの申請書に複数の異なるパターンを含むこともある。kintoneは、これら複雑な承認要件にも柔軟に対応することができる。

休暇申請
2日以内の休暇は課長の承認が必要。
10日以内の休暇は部長の承認が必要。
10日以上の休暇は、総経理の承認が必要。

残業申請
平日の残業は課長の承認が必要。
週末の残業は、所長・副部長/部長の承認が必要。
祝日は総経理の承認が必要。

財務管理のスマート化で経費精算がより手軽に

山善(深圳)は財務申請アプリの使用を開始した。
社員は毎月、交通費、出張費、接待費、携帯電話代など、さまざまな経費を精算する必要があるため、複数の申請書を別々に紙で提出するのは面倒で非効率だった。そのため、山善(深圳)では「毎月個人経費精算」というkintoneアプリを使用し、様々な経費の精算を一つの申請表に集約させることで、社員が各種経費の詳細と税額を一つの表に入力し、合算や精算を行えるようになった。この方法で、経費精算の効率を大幅に向上し、繰り返し作業も削減を実現できた。


個人経費月次精算

「3月に承認した設備前払い金を6月に決済」の期ズレ問題を解決

実は、kintone導入当初には設定されていなかったフォームも多い、例えば「決済通知連絡票」アプリ(李宏副部長)。以前は、営業スタッフが決済が必要なタイミングで、電話や電子メールなどの手段で経理部門に連絡していたが、非効率ばかりか、漏れや遅れも生じやすい。「決済通知連絡票」アプリを導入後、担当者はいつでも決済進捗状況を確認でき、経理担当者も決済案件の取りこぼしを効果的に回避できるようになった。
さらに、設備によっては3ヵ月前に購入申請が承認され、実際の決済は設備の出荷前まで待たなければならないケースもある。この場合、承認後すぐに決済すると、かえって実際の業務ニーズに合わない。この問題の解決に、「決済通知連絡票」アプリが重要な役割を果たしている。山善(深圳)では、実際のビジネスシーンに合わせて、決済方法の区分を行っている。社員が決済の必要な際に、決済通知連絡票に入力するだけで、経理部門に決済情報を通知する。経理担当者は通知受領後、決済を手配できる。これにより、決済フローの柔軟性を高めただけでなく、部門間の連携も強化できた。

決済通知連絡票アプリ - 一覧

決済通知連絡票アプリ - 詳細画面

情報共有によって取り払われた部門間の垣根

1.kintoneポータルを通じて、会社の通知、公告、制度公開、トップメッセージなどを全社員で共有。
「全社員がよりスムーズにkintoneを利用できるよう、掲示板にkintoneシステムに関する注意事項やガイドラインを掲載しました。」(李氏)
2.各種業務データ、共有ドキュメント、社内制度、研修資料を一元管理し、社員がいつでもアクセスできるようにすることで、効率的で透明性の高い情報伝達を実現した。

以前、新入社員研修は各部門の責任で行われ、研修資料も各部門に分散で保管され、特に基礎研修の統一的管理・改善体制が整っていなかった。昨年、李宏副部長が新入社員向けの研修資料アプリを立ち上げた後、社員研修内容の体系的な管理や継続的な改善を実現できた。新入社員は、会社の制度規則、企業文化をより早く、全面的に理解できるようになった。
「新入社員の入社後、通常1週間以内に集中研修を終えるが、内容を忘れるのも早い。研修資料アプリがあれば、社員はいつでも自分で関連知識にアクセスし、それを定着させることができる。入社2年目の社員でも、このアプリを通じて最新の研修コンテンツや情報にアクセスできる。」(李氏)

研修資料ダウンロードアプリ ‐ 一覧

研修資料ダウンロードアプリ ‐ 編集画面

山善(深圳)は営業メインの企業として、毎月、工具と機械の2つのセグメントにおける全営業スタッフの業績をまとめ、その状況を社内で共有している。このため、2024年山善(深圳)は「工具・機械個人業績」アプリを設計し、各営業メンバーが積極的に業績管理に参加し、チームの仕事の見える化と結束力を高めるとともに、社員の熱意や競争意識を刺激することで、会社の全体的業績を促進できるようにした。

工具・機械個人業績アプリ ‐ 一覧

業務フローの一体化、部門間のシームレスな連携

「受注レポート」アプリは、業務部門と技術部門のワークフローをシームレスに統合することで、部門横断的な協業オペレーションを実現した。具体的には、設備の注文を受けた後、営業部門は迅速に注文情報を技術部門に伝える必要があり、技術部門は設備の設置や関連部品(警報灯、変圧器、水槽など)の設定・調達を担当する。そのため、営業部門と技術部門との情報の伝達は非常に重要である。
このアプリにより、営業部門による受注から契約締結、設備の設置、到着、検収、保守などが一元管理されるようになった。全ての関連情報をシステム内でリアルタイムに共有し、各プロセスを見逃さないようにすることで、部門横断的な協業効率・精度を大幅に向上させ、情報不足による対応漏れを効果的に防ぐことができた。
kintoneの承認フローは、部門レベルで設定することも、カスタマイズで部門横断の承認プロセスも実現できる。柔軟なバックグラウンド設定により、部門横断作業プロセスを効果的に実現し、多様化するオフィスのニーズに応えることができる。

受注レポートアプリ ‐ 一覧

受注レポートアプリ ‐ 詳細画面

受注レポートアプリ ‐ ワークフロー

山善が日本から工作機械や切削工具の付属品、精密測定機器など設備を輸入する場合、商品情報を事業部門や物流部門から経理部門に共有する必要がある。ここから誕生したのが「輸入通関管理表」アプリである。
「部門間でのデータ共有において、管理部に関連するデータはほぼ全てアプリで管理するようになりました。」(李氏)

輸入通関管理アプリ ‐ 編集画面

目標達成度評価システムのカスタマイズにより、運用コストを年間約1万元削減

山善(深圳)は当初、評価内容の共有と採点に主にエクセルを使用し、目標達成度評価管理を行っていた。その後、専用ソフトを導入し、2年間使用していた。しかし、kintoneを導入してから、李氏は、kintoneが社内の情報共有や業務承認のニーズに対応できるだけでなく、人事評価管理にも活用できると気づいた。そこで実際の評価要件に応じて、kintone上に目標達成度評価管理モジュールを構築、当初のExcel方式や評価専用システムを完全に廃止したことで、評価プロセスの全体最適化とシステム統合を実現できた。
「kintoneはシステムの統合を実現しただけでなく、ほかのシステムの追加購入費用の面でも数万元節約できた。唯一の欠点は、私たちの評価ルールが複雑すぎること。現時点で使用している評価管理表アプリは、すべてこれまでの表形式を参考して作成したもので、まだ改善・改良の余地があると感じています。」(李氏)

目標評価管理表アプリ ‐ 営業一般職用フォーマット

目標評価管理表アプリ ‐ 内勤一般職用フォーマット

目標評価管理表アプリ ‐ エンジニア一般職用フォーマット

当初30個程度だった承認アプリは90個以上に増え、80,000件以上のデータが稼働中

「山善(深圳)の技術スタッフは非常に学習能力が高く、改善が必要な業務プロセスに気づくたびに、率先してkintoneを研究し、システムによる改善や新しい方法を積極的に模索してくれている。」(李氏)
技術部門が持続的に業務フローを最適化し、すでに15のアプリが稼動している。システム部門にも6つのアプリを稼働させている。

各部門による利用の拡大で、kintoneプラットフォーム上のアプリ数は導入以降、30個から90個以上へと増え、勤怠管理、業務、総務、人事、技術、財務管理など、さまざまなシーンを網羅している。これは同社が業務管理のデジタル化を推進し続ける重要な理由の一つとなっている。

「業務シーンにおけるニーズの発生や改善について考えるとき、私は二つのことを考えます。まず、それをkintoneで実現できるかどうか。次に、それによって起こりうるポジティブなインパクト、例えば情報の効果的共有や効率的伝達など。その結果、確かに私たちに必要なものであれば、その業務シーンに合わせたアプリを作ることになります。」(李氏)

kintoneシステムは、山善(深圳)の業務効率や情報共有能力を大幅に向上させた。使う側にとっては、シンプルで直感的な操作性、作る側にとっては達成感・やりがいを感じることができる。本当の意味で理解・活用してはじめて、kintoneの価値を最大限に発揮できる。

「最初は、なぜ自分たちでシステムを一から構築しないといけないのか戸惑ったが、今なら、分かる。真のデジタル化は企業業務のDNAの中に育つものであり、本当の意味で業務を理解し、フローやニーズを知って、はじめてよりよく管理のデジタル化を実現することができる。」
――李氏はこのように総括した。

将来の展望

継続的な最適化で、中国製造業のデジタル化ベンチマークへ

山善(深圳)は、引き続きkintoneを中核なプラットフォームとして、業務への応用シーンを最適化・拡大していく。
今後は、営業部門のユーザー・エクスペリエンスをさらに改善し、より多くの業務フローのデジタル化を推進し、ほかのシステムとのデータ連携を強化していく予定だ。
山善は、中国の製造業におけるNo.1のトータル・ソリューション・プロバイダーを目指している。その中で、kintoneはDXプロセスの重要な礎石として、企業のさらなる効率化とスマート化をサポートしていくだろう。

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