【業務内容】
精密金型や精密プレス加工、自動機の企画・設計・製造
【利用用途】
売上情報共有、営業案件管理
上海太瑶自動化科技(タイヨーアクリス上海)は、精密金型や精密プレス加工に強みを持つ一方、中国では特に自動機の拡販に注力している。自社工場を抱えずにファブレスで営業機能に特化する中国法人では、商品が高額単価ゆえに仕入れや入金など各案件の管理が必要不可欠。そこで、キャッシュフローの”見える化”をkintoneで実現した。
中国における事業展開と kintone による営業管理の効果について、加藤 康寛総経理にお話を伺った。
本社のタイヨーアクリスは1943年創業の太陽機械工業の電機事業部が分社独立してできた企業です。主に、電気・電子機器分野のお客様に精密金型や精密プレス機器を提供しています。中国に進出するきっかけとなったのはリーマンショックです。あれで売上が7割減りました。翌年にはかなり持ち直しましたが、以前と同じ水準には戻りませんでした。そういう中で、取引先の顧客企業から「海外に進出しない企業とは付き合えない」と言われたんです。取引先の企業さんたちもこれからは海外マーケットに売っていかないといけない。そういう海外マーケットをターゲットにした製品は現地の部品を使って生産する。「地産地消」なんです。コスト削減目的じゃないんですよ。これが海外進出のきっかけです。もちろん「海外で作っているんだから安くしてくれ」とは言われますが笑中国に進出したのは2012年です。ただ、我々も大きい企業ではないので、いきなり海外に工場をつくるほどの投資はできませんでした。そのためローカル企業のパートナーを探しを始めたんです。 エージェントは使いませんでした。 私はもともと中国で働ていた経験があったので、その人脈でいい会社を教えてもらったり、展示会に出てみたり。すごくキレイな会社案内を送ってくる会社に行ってみたら、実体は汚い町工場で、工場のその辺に吸殻落ちていたりとか。。 まったく使えないところがほとんどでした。全部で100社は回りましたよ。今お付き合いしているパートナー企業は私が直接探したところです。
前述のとおり、日本では金型やプレス加工品の提供がメインですが、 中国では自動機をメインで提供しています。 なぜかというと、人件費の高騰というか、むしろ人が集まらないからなんです。 90后(ジュウリンホウ。1990年代生まれの若者のこと)が増えてきて、 地道で大変な工場の仕事をやりたがらなくなってきたんです。10年前とは大きな違いです。 工場で使われる工作機械というのは、何でも作ることができるのですが熟練していないと操作できないんです。 長く働いてくれる人が集まらないと工場で生産自体ができなくなってしまうのです。 我々が提供している自動機は専用機といって、 材料をいれてスイッチをいれたら誰が操作しても製品が完成します。 これであれば、人が少なくても、新しい従業員でも高品質な製品を作ることができます。 専用機のニーズは中国では非常に強いですね。
設計は、案件の難易度に従って日本と現地半々でやっています。 パートナー企業には弊社の技術者が常駐しているので、技術教育も日々行えます。 中国で設計するとコストを下げた提案ができますね。 我々のお客様は現在は100%日系企業です。 当初はローカルの企業ともお付き合いをしたのですが、やはり回収の問題が発生し、 日系のみに切り替えました。 自動機分野では中国ローカルの競合も多く、弊社よりも安価に提供してきます。 しかし、日系企業だと求める品質が高くなります。 自動機は「構想設計」と「最後の調整」が非常に重要です。 ローカルの競合が図面だけ手に入れて作っても、調整ができないため まともに動きません。 そういう点で、ローカル企業の競合他社よりも価格が高くても弊社製品を採用いただいているのだと思います。
「人件費高騰や人材確保難から中国の自動化のニーズは今後拡大する」と
加藤総経理
スイッチ一つで製品ができあがる専用機。「構想設計」+「最後の調整」が肝だ。
自動機を顧客に提供しようと思うと、その部品を調達しないといけなくなります。 弊社も多くのサプライヤーから様々な部材を調達するのですが、中国現地では納期が守られないことが多いのです。 また半分近くの部品を日本から調達することになるため物流や税関など様々な原因で遅延することも少なくありません。 一つでも部品が足りないと自動機は製造できないのです。 また、自動機は非常に高額な製品です。 売上も大きいのですが、その部品の調達にかかる費用も高額になります。 キャッシュフローを意識しないといつ倒産してもおかしくない状況になります。 こうした事態を予め想定できるよう管理することが中国では重要で、まさにkintoneの導入のきっかけでもあります。
一番利用しているのは「キャッシュフロー」に関する管理です。 自動機(FA)は完全受注生産の顧客の専用機であるため商談単価も大きく、 その製造には多額の仕入れが発生します。 そのためキャッシュフローの把握が非常に重要になります。 kintone を利用し始めてからは受注・受注残・売上・回収等の 金額が一目で把握できるようになりました。 いまや中国での経営にはなくてはならないものになっています。
月ごとの売上・利益推移 仕入れ額が大きい自動機では損益の把握は必須だ
各受注案件の受注日・納品日・売上日・回収日が一目でわかる
営業案件管理では、 私も含めて普段は既存のお客様との商談や新規開拓で飛び回っているので、 それぞれが抱える案件の状況は2週間に一度の会議で共有しています。 その場でkintoneの管理画面をプロジェクターで映して確認するのです。 正直、導入前は担当者が何をやっていて、案件がどこまで進んでいるのかが把握できないことも多く、 その結果、納期の遅れや納品物の不具合が問題が発生してから判明することもありました。 トラブルが発生してから報告を受けても困ってしまうんです。 顧客との接触履歴を商談報告にのこす運用にしてから、事前にトラブルの可能性を察知できるようになりました。 これにより未然に対策を打つことができるようになったのです。 この点でもkintoneは非常に役立っています。
案件一覧
2週間に一度の会議でこのデータをみながら
進捗確認を行う
商談履歴
活動履歴をリアルタイムに把握しトラブルの
芽を未然に防ぐ
「在中日系製造業が元気がないのはたぶん営業していないからですよ。待っていても引き合いがくるわけではありませんから。」新規訪問数は重要な指標だ。
クラウドでいつでもどこにいても確認できる利便性も欠かせませんね。 私自身も外に出ていることが多いので、皆で集まるのは2週間に一度でも、 常に担当者の動きや案件の状況を把握しつつ、 また各案件のコストや会社のキャッシュフローもkintoneで管理していますので、 経営判断に必要な多くの情報がここで把握できるわけです。 今後は考課などの人事管理にも活用していきたいと考えています。
実績だけでなく、各自の活動計画もどこでも確認できる
弊社の主要なお客様は日系企業の製造業です。 コストダウンという点からも中国では自動化の流れがますます加速していくと見ています。
現在でも特に製品の検査工程などは従来の人の手に頼っていた業務の機械化は一段と拡大していますので、 そうしたニーズに確実に取り込み、自動機の事業をさらに伸ばしていきたいと考えています。
2017年の設立5年目には現在の売上の3倍を目指しています。