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精工表貿易(上海)有限公司 様

136年続く老舗の腕時計ブランドが中国で新たなブームを起こす
スピーディな意思決定が可能な情報共有を実現したのはkintone

【業務内容】

腕時計の販売

【利用用途】

ワークフロー

会社概要

創業1881年。セイコーの歴史は今から実に136年前に始まっている。掛時計に懐中時計、そして日本で初めてとなる国産の腕時計と、そのブランドは長い歴史を刻み、その間に世に送り出してきた数多の商品もまた長い時を刻み続けてきた。精工表貿易(上海)有限公司(以下、セイコーウオッチ中国)は、腕時計を中心に企画およびグローバルにそれを販売するセイコーウオッチの中国法人として、上海をヘッドクォーターに北京と広州に代表所を構え、ここ中国でセイコーブランドの腕時計を販売している。2016年、董事長に就任した吉村等氏は、過去から積み重ねてきた経験の延長ではなく、新しい売れ筋商品をTmall(天猫)に代表されるeコマースを活用して販売する方針に大きくシフトし、かつてない成功を収めている。同様に組織も大きく改革し、迅速な意思決定を可能とする情報共有を実現すべく、kintoneを導入した。吉村等・董事長兼総経理にお話を伺いました。(取材:2017年8月)

今回は中国でセイコーブランドの腕時計を販売する精工表貿易(上海)有限公司様にお伺いしました。

事業紹介

セイコーのダイバーズウオッチが中国で人気
メーカーの仕事は売れ筋商品を創ること

中国といえば、高級志向でラグジュアリーな高価格帯の腕時計ばかりが売れる。そんなステレオタイプなイメージは、セイコーウオッチ中国の吉村董事長の話を聞くと一気に払しょくされる。「高ければ良い、という志向は、もはや消費者としての中国人の全体を代表するものではありません。生活スタイルや好みが多様化し、eコマースの台頭で時計を買う場所も百貨店をはじめとする実店舗に行かずとも多くの選択肢に触れることができる。例えば、今年4月に日本から仕入れたセイコーのダイバーズウオッチは、僅か3ヶ月間で会社と店舗から在庫が全てなくなるほど人気があります」(吉村董事長)。

精工表貿易(上海)有限公司の吉村等・董事長兼総経理。
消費者と触れ合うイベントや番組で、自らが先頭に立ってセイコーブランドの腕時計を啓蒙・宣伝する。
「消費者にメーカーの顔が見えていることが大事」だと話す。

昨年一年間で販売した数量の実に10倍超が3ヵ月間で売り切れたというダイバーズウオッチ「PROSPEX」(プロスペックス)。ダイビングなどのハードなシーンにも対応する本格的な機能を備えたプロフェッショナル向けのブランドだ。しかし、「PROSPEX」を買う購入層のボリュームゾーンは決してスキューバダイビングを趣味とする人たちではない。ファッションとして、ラフな格好に似合う腕時計を求める消費者だ。

「これまでは”ダイバーズウオッチは中国で売れない”という定説が社内にありました。中国人の志向はラグジュアリーでドレッシーなもの、というこれまでの経験の延長である種の思い込みがあったのです」。そう話す吉村董事長が昨年の就任以来、重視しているデータが在庫の数量。ディーラーへの出荷数ではなく、実際に売れた数量、つまりは実需だ。「売れていると思っていた従来の商品群の市場はすでにレッドオーシャンでした。逆に売れないと思い込んでいたダイバーズウオッチは新しい志向の消費者によって実需があったのです」(吉村董事長)。

昨年は9シリーズしか展開していなかったダイバーズウオッチ「PROSPEX」は現在35シリ
ーズを中国で販売するまでの売れ筋商品になっている。

こうした商品戦略と同じように、過去の経験の延長から大きく方向転換したのがチャネル戦略だ。百貨店での直営販売から問屋へ卸す間接販売といった従来の販売経路から、アリババのTmallをはじめとするeコマースに大きく舵を切ったのだ。しかし、吉村董事長はこう補足する。「チャネル戦略が必ずしも重要なのではありません。我々メーカーがやるべきことは一つ、売れ筋商品を創ることです。例えば、ダイバーズウオッチのように商材が変われば、自ずとチャネルも変える必要があります。ましてや、スマートフォンの登場で中国人の生活の基盤も大きく変わっています。ビジネスの構造が変わって当然なのです」。

メインストリームの市場に向けて展開する「PRESAGE」。
なかでもカクテルシリーズと呼ばれモデルは、上海の外灘にあるバーを舞台にイベントを実施するなど、独自のプロモーションを展開している。

セイコーウオッチ中国で董事長に就く以前の吉村氏のキャリアは、錚々たる日系企業で中国現地法人や新規の中国工場の立ち上げや中国企業との合弁・解消など、実に22年間を中国で過ごしている。「腕時計の市場はアメリカと、ここ中国が世界の二大市場。セイコーはグローバルに展開するが、ここ中国は従来を踏襲するのではなく、新しい方法でまだまだやれることがたくさんある」(吉村董事長)と、その手腕にかかる期待は大きい。

導入前の課題

従来の11部門を3つのグループに大きく再編
非効率なメールと紙のワークフローが課題に

商品戦略やチャネル戦略を大幅に見直すと同時に、吉村董事長が就任後に着手したのが社内の組織改革だ。従前は11部門と非常に細かく分けられていた部門をマーケティング、セールス&CS、そしてビジネスサポートの3つのグループに再編した。その心は何か。「利益にならない仕事をしないようにするため」だと吉村董事長は説明する。「部門が多いと、その間でメールを用いた調整や会議の資料作りといったムダな時間を多く浪費します。会社にとって、この時間は全てコスト。重要なことは、”重要ではない仕事をしないこと”です」。

その重要ではない仕事の一つが、非効率な各種業務の申請や承認・決裁のワークフローだった。従来はメールや紙を用いていたため、申請者からすると決裁者が外出や長期に出張しているといつ決裁されるのかが分からない。一方、決裁者からすると、オフィスに戻ると自分のデスクの上は申請書類の紙の山。また、複数の担当者と複数の申請内容について同時並行でやり取りするのに、メールでは「数が多すぎて、どのやり取りがどの内容だったか分からなくなったり、必要なやり取りを探す手間がかかる」(吉村董事長)ため、相当に非効率だったと振り返る。

「2017年の今年、社内のスローガンに掲げた言葉は『主動(Positive) 快速(Speedy) 改変(Change)』。主体性をもって積極的に、スピーディな意思決定で、変化していく。時代が進んでいるのに、今までと同じことをやっていたら、遅れていくのは当たり前ですから」と吉村董事長。そのスピーディな意思決定を実現するため、2017年4月にkintoneの運用を開始した。

導入の効果

申請内容に関するやり取りの履歴が一目で分かる
保証カードなど現場からの要望で新たなアプリも

セイコーウオッチ中国がkintoneで利用するアプリケーションの一つに「手表保卡申請表」(腕時計保証カード申請表)がある。セイコーの腕時計の購入者に渡す保証カードを販売店に提供する際の社内申請のワークフローだ。kintone導入前は販売店からの申請表のデータをメールで回付していたが、kintone導入後は全てこのアプリケーションに集約している。申請は全てナンバリングされ、申請者や申請日、保証カードを提供する販売店などの名称、必要な枚数、さらに販売店からの申請表がファイルデータとして管理されている。

kintoneの導入や運用を担当している
郭薇・総経理室副経理(IT担当)

腕時計の保証カードを社内申請するアプリケーション「手表保卡申請表」では、保証カードの枚数や提供するディーラーや販売店の名称
を入力して上長の決済を仰ぐワークフローだ。

また、「分部退貨/換貨申請表」は商品の返品・交換を社内申請するアプリケーションだ。日本から商品を仕入れ、それらをセイコーウオッチ中国が中国のディーラーや販売店に出荷した際に商品が傷付いてしまうことが時としてある。その場合に一定の期間で返品または交換を受け付け、社内で承認を得るためのワークフローだ。「実は保証カード申請表とこの返品・交換申請表の2つアプリケーションは、現場から要望の声が上がって作成したものです」と、kintoneの導入から実際の運用を担当する郭薇・総経理室副経理は明かす。導入直後は、以前の習慣からメールでの申請が散見されたが、ある期日をもって「メールでの申請は一切受け付けないことに」(吉村董事長)することで、kintoneへの完全移行を早くに実現できたという。

「分部退貨/換貨申請表」は商品の返品や交換に関する社内申請のアプリケーション。
社内の現場から要望の声があって作成された。

保証カードや返品・交換といった特定の内容以外の営業に関する申請・承認・決裁については、全て「【営業】業務措置申請表」で対応する。販促キャンペーンなど費用が発生する申請は、発生費用に具体的な金額を入力して決裁を仰ぐ。この際に、コメント機能を活用して「申請者と申請内容についての細かな確認をスピーディにやり取りできる」のが重要だと吉村董事長は話す。また、それらのやり取りが「一つの申請案件毎にまとめられていて、後から履歴が簡単に確認できることは非常に便利だ」とその利便性を強調する。

「社内での利用が一番多いのが営業関連の業務に関する申請・承認・決裁のワークフローだ。
写真では新しい修理拠点を新設する内容の申請に対して、吉村董事長がコメントしている。

クラウドサービスであることも、吉村董事長がkintoneを評価するポイントだ。インターネット環境があれば、外出先からでも利用できる上、自社でサーバーを立ててIT資産を抱え込むのではなく、サービスを利用することでスピーディに運用でき、かつ無駄なコストを抑えることができるためだ。今後の活用についても、「現在は販売店に無償で提供しているカウンターを貸し出す形式に変更します。その際にカウンターを固定資産としてkintoneで管理しようと考えています」(吉村董事長)。

将来の展望

修理拠点を増やし、アフターサービスも充実
中国で100年後もブランドとして生きていく

「100年後も中国で生きていくブランドでありたい」。今後の取り組みについての質問に、吉村董事長はこう答える。「そのためには、中国でセイコーの腕時計を購入して頂いたお客様に信頼して頂くことが大事」だと続ける。現在、中国では20都市に修理拠点を構える。これらを増やすと同時に、セイコーの腕時計の修理の技術を特約店に広く開放して、中国国内のどこででも修理できる環境を整える方針だ。

上海のオフィスに併設された修理拠点は綺麗なガラス張りで外から修理するスタッフの様子を見ることができる。

「お客様にいかに長くセイコーの腕時計をお使いいただくかに心を砕きます。そのための一つとして、会員制の仕組みを新たに作り、より充実したアフターサービスを提供できるよう努めていきます」(吉村董事長)。

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