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上海NAC 様

中国富裕層向けの宅配水「CreClaMio」の顧客数が着実に伸びる中配送の数量や予定日などのオーダー情報の管理をkintoneで効率化

【業務内容】

宅配水「CreClaMio」の販売

【利用用途】

顧客管理、オーダー管理、在庫管理、回収管理

会社概要

クリクラ」のブランドで宅配水事業を日本で展開する株式会社NACの中国法人・上海熙田貿易有限公司(以下、上海NAC)。2016年5月から中国で一般消費者向けと企業向けに宅配水「CreClaMio」の販売を本格的に開始し、着実に顧客が増え続けてきた。同時に顧客管理や在庫管理の運用が従来の手書きの台帳やエクセルの利用では難しくなり、日本本社で導入しているkintoneを採用し、業務効率化に着手。顧客毎に異なる配送の数量や予定日の管理を徹底し、配送漏れや数量の間違いを防止している。

今回は、中国歴が延べ30年という上海NACの内舘総経理に中国で新たに挑戦する宅配水の事業展開とkintone導入に至る過程とそのメリットについてお話を伺った。(取材:2017年1月)

事業紹介

食の安全に対する意識が着実に高まる中国市場で
富裕層や企業を対象に高付加価値な宅配水を展開

上海NACの日本本社は宅配水のほか、清掃用品のレンタル業や住宅事業を全国で手掛ける東証一部上場の株式会社NAC。その同社が日本で一般消費者向けに高いシェアを持つ宅配水「クリクラ」を展開するために中国法人で事業を本格的に開始したのが2015年だ。日系企業としては決して早い中国における事業開始ではないものの、「食の安全が強く意識し始められ、富裕層を中心に水に対する関心が高まっている今だからこそ、中国にチャンスがある」と内舘総経理はその背景を説明する。

上海煕田貿易有限公司・総経理の内舘均氏                         マネージャーの康誼氏(右)と許浩泉氏(真ん中)

「同社の宅配水「CreClaMio」(クリクラミオ)は、12リットルのボトル1つの価格が158元と確かに高価だ。他の業者の宅配水と比べ、おせじにも安いとはいえない。にもかかわらず、昨年5月の販売開始からわずか数ヵ月間で400件近い顧客がその価値を認め、本来は顧客開拓のために外を飛び回るべきスタッフがオーダー内容の管理や配送の手配などに奔走する日々が続いたという。「クリクラミオは富士山の麓の採水地で地下253mから採水しています。その水を日本国内でボトリングして、中国でお客様にお届けするそのままの状態を日本から輸入しているのです」(内舘総経理)

あくまでクリクラミオの品質と価格に、その付加価値を感じる中国人消費者を顧客対象とする中で、一例として非常に分かりやすい潜在顧客層がある。子供が生まれたばかりの家庭やこれから出産を控えた妊婦たちがそれだ。「多くの中国人富裕層が子供に飲ませる粉ミルクは日本産などに安心を買い求めるのと同じように、粉ミルクを溶く水に対してもかなり関心が高い」と内舘総経理。中国では昔から妊婦の出産後1ヵ月間の過ごし方として”坐月子”という風習があり、最近ではその期間を過ごすための高額な専門施設が大人気だという。実際、昨年5月に浦東の高級ホテルに設けられた専門施設でクリクラミオを紹介するイベントを開催。実に80名を超す産後または出産を控える妊婦が集まり、内舘総経理は「中国人富裕層の水に対する関心の高さを改めて実感した」と話す。

ウォーターサーバーは無料でレンタルでき、
ボトルはWechatやタオバオから簡単に注文できる

2016年に浦東のホテル内にある出産回復センターで開催したイベントには多くの妊婦や関係者が参加

クリクラミオの顧客は富裕層を中心とした一般消費者だけではなく、実は企業も広がっている。富士山の麓で採水した天然水が中国で飲めるとあって、企業からの引き合いは後を絶たないという。しかし、課題がないわけではない。香港を含め、中国で仕事を始めて実に30年という内舘総経理は、「日本の品質を中国の価格で提供する。これをいかに実現していくかが最大の課題だと考えています。そこに日本の高いサービス品質という付加価値をつけ、かつ富士山の天然水という高品質な商品を提供することによってお客様に満足して頂きたい」と中国ビジネスに重要な勘どころを披露しつつ、今後は上海近郊を中心とする現在の配送エリアを中国全土に拡大すべく、豊富な経験をもとに様々な施策を思案中だという。

導入前の課題

顧客毎に異なる数量や配送日の管理ミスが発生手書き台帳による管理手法の改善が急務となる

マネージャーの康誼氏                                     マネージャーの許浩泉氏

宅配水事業の本格的な開始から数ヵ月。顧客数が三桁を超え、さらに200件、300件、そして400件近くに達したころ、本来の予定日にクリクラミオが配送できていないといった事態が発生し始めた。原因は、顧客やオーダー内容、在庫に関する情報を全て手書きの台帳やエクセルで管理していたため、Wechatやタオバオ経由で入る顧客毎に異なるオーダー情報(配送個数や配送希望日等)を手入力で台帳やエクセルに転記する際、書き間違いが生じ、本部と倉庫の間で共有する情報が本来のオーダー内容と異なってしまったことにあったという。

一時は配送日を特定の曜日にのみ限定するといった議論も社内で行われたが、「自社の都合でお客様に不便を与えては本末転倒」(内舘総経理)と管理手法の改善の検討を開始した。加えて、「顧客やオーダーの情報管理に費やす社内業務を少しでも軽減し、従業員のリソースを新規の顧客開拓に充てる時間に変える必要があった」と内舘総経理は当時のもう一つの課題を振り返り、「すぐにシステム化しなければ」と本社の情報システム部門に相談。結果的に日本側で法人営業の商談管理等ですでに利用実績があるkintoneの採用が、社内のノウハウを活かす上でも最良と判断し、中国法人への導入を決定した。

ちなみにkintone導入前の当時、いわゆる台帳として配送の数量や予定日の管理に利用していたのは一般的なカレンダーだ。一般消費者と企業が混在する顧客のオーダー情報を膨大に管理するには、さすがに十分ではないが、当日の業務状況を知り得る貴重な資料として今も社内で大切に保管されている。

導入の効果

Wechatやタオバオの注文情報をkintoneに取り込み
オーダーや在庫の情報を連携、棚卸しの時間も短縮

上海NACでkintoneが本格稼働したのは、2016年11月からとまだ日は浅い。しかしながら、課題として抱えていたオーダー管理を中心に顧客や在庫の管理に加え、今や一般消費者からのオーダーの95%近くを占めるWechatやタオバオ経由で決済された売上(回収)の管理まで、基本的な機能で効率的な業務管理を実現している。

顧客管理として個人・法人のユーザーの情報をkintoneで一元管理

Wechatやタオバオからの注文情報もkintoneに同期される仕組み

例えば、Wechatやタオバオ経由で受けたオーダー内容はCSVファイルに書き出した上でkintoneの顧客管理やオーダー管理にアプリケーションに取り込み、本部と倉庫の双方で顧客名や配送数量、配送日などの情報を間違いないように同期している。多少の手作業は残っているものの、従前のように台帳に手書きで転記し、それを目視で確認して倉庫側とやり取りしていた管理手法に比べると、記入漏れの防止や事務作業の大幅な短縮を実現している。また、当日の配送に関する情報はkintoneで関係者全員にメールで周知される仕組みを作り、配送漏れや数量の間違いなどの業務ミスの防止を徹底している。

当日の配送情報は毎朝関係者にメールで周知され、業務ミスを防止する

さらに、毎月月末に実施する在庫の棚卸に関しても、「従来は手書きの台帳に記載した顧客毎の配送記録を一つ一つ計算して月間の配送数量を算出していましたが、時間もかかり、計算間違いが生じるリスクもありました」とkintone導入前の状況を振り返るのは、業務担当の康マネージャーだ。kintone導入後は、「顧客からの注文数や配送日等のオーダー情報と在庫管理の数値がkintone上で連携しているため、実際に倉庫で在庫の棚卸に要する時間が大幅に短縮しました」(康経理)と、その業務効率化の効果は大きい。

「弊社のkintoneの活用はまだ始まったばかりで、今後の更なる業務効率化に大きく期待している」と内舘総経理。インタビューに同席した許マネージャーは、上海近郊以外にも配送エリアを拡大する今後に向けて、「顧客の住所(配送エリア)に応じて自動的に到着日が算出できるような仕組みもkintoneで実現できるよう検討したい」と、その利活用に意欲的だ。

将来の展望

上海近郊エリア以外に宅配する体制の構築を目指す
顧客拡大に向けて将来的には販売代理店網の構築も

富裕層をターゲットとする高付加価値の宅配水で、いわゆる一般的な宅配水業者と差別化を図る上海NAC。将来的に配送エリアを現在の上海近郊から更に拡大し、より多くのクリクラミオの愛用者を中国全土に拡げるため、今後は代理店網の構築にも注力する構えだ。また、ウォーターサーバー用のボトルの水の販売に加え、同じくクリクラミオのブランドで展開するペットボトル(500ml)の一般店舗等での販売チャネルの拡大も視野に入れている。

現在はWechatやタオバオのショップだけで 販売するペットボトル500mlは今後は 一般の店舗での取り扱いも拡大する

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