【業務内容】
ウェブサービスやアプリケーションの開発
【利用用途】
顧客管理、タスク管理、社員・面接者情報の管理、賞与管理、プロジェクト管理、見積作成、経費申請
2011年設立の達暉資訊有限公司は、SI(システムインテグレーションサービス)を得意とする企業である。従業員約50名のうち、9割がエンジニアで、SES(システムエンジニアリングサービス)とオフショア開発の2種類のサービスを提供している。取引先は台湾大手の金融や保険、通信企業など約200社、これまでのプロジェクト実績は500件を超える。同社では顧客管理を自社開発システムで運用していたが、2019年からkintoneを導入した。その経緯や効果について董事長 陳 冠州氏とコンサルティング部 営業マネジャー 鍾 葳氏にお話を伺った。
01. 自社開発や外部サービスの顧客管理システムでは会社ニーズを満たせなくなっていった
すべての企業に共通して、顧客管理は重要である。同社は当初、自社で顧客管理システムを開発。アプリケーションシステムで補完しながら、顧客により良いサービスを提供してきた。しかし、会社の規模が拡大するにつれ、従来のシステムでは運用しにくくなっていったという。
従業員の業務量増に伴い、管理が行き届かなくなった。運用においても常にシステムを改修しなければならないが、多くの時間と労力もかかる。顧客との信頼関係の強化に注力したい同社にとって、会社ニーズを満たすシステムにしていくだけの余力はなかった。
陳氏は、新システムの導入も考えたという。「自社開発では市場の変化に対応し切れず、費用対効果も見込めないため、外部サービスを検討しました。しかし、これらは相互連携ができず、運用していくには人の手でまとめる必要がある上、それをまた確認しなければなりません。会社ニーズを満たし、リアルタイムにデータが連携できるのはもちろん、部門間でのコミュニケーションにも活かせる顧客管理システムの必要性を感じたのです」
陳氏が模索中に出会ったのがkintoneである。とくに興味を引いたのが、「ノーコード/ローコード」という開発手法。ソースコードの記述が少量もしくは不要のため、アプリケーションシステムを迅速に開発でき、市場の変化に対応した改修や調整も容易だった。
「kintone導入の決め手は2つありました。1つは自社開発に比べ、開発やメンテナンスの時間とコストを抑えられることです。2つ目はユーザーが簡単かつ自由にカスタマイズできること。エンジニアとコミュニケーションを取らなくても、個々で必要な機能を増やしたり、画面を変えることができました」(陳氏)
全従業員が気軽に使えるツールでもあったため、会社がわざわざ説明する必要がなく、効率性も高かった。自社開発システムや外部サービスで抱えていた悩みをすべて解決できると判断し、導入を決めた。
董事長
陳 冠州氏
kintone導入後は、100社以上もの顧客情報とプロジェクトが即座に検索や分析できるようになった。鍾氏は「とくに、顧客管理では業績状況や新たなニーズ、将来のビジネスチャンスなどの全体像を把握しやすくなりました。一歩先を見据えた分析もできるようになり、kintoneは不可欠な営業ツールになっています」と話す。
「『スマートフォン通知機能』を活用し、顧客とのやりとりも記録しています。これまではノートやスマートフォンのメモ帳などにまとめていましたが、うっかり忘れてしまい、顧客との関係に影響が及ぶこともありました。kintoneでは記録情報を自動で整理し、業務日程などはリマインドしてくれるので、業務の抜けや漏れがなくなったのです」(鍾氏)
kintoneのおかげで、従業員の作業量は大きく軽減された。有用な機能も併用することで、顧客との関係も良好になっている。鍾氏は、「以前からの悩みが解消された」と喜んでいた。
コンサルティング部 営業マネジャー
鍾 葳氏
kintoneでは各業務の連絡記録や進捗、顧客の業績が一目瞭然。新たなニーズや将来のビジネスチャンスなどの発見にもつながる
02. 「絞り込み機能」と「電子見積書」で顧客サービスが向上顧客から信頼を得るには、スピーディーな対応も重要になる。それを実現しているのが「絞り込み機能」と「電子見積書」である。例えば、営業部が顧客に情報を提供する場合、必要項目にチェックを入れるだけで情報を絞り込めるため、資料作成が簡素化、迅速に提出できるようになった。
「電子見積書」は当然、営業部によるExcelやWordでの作成や計算を不要にした。さらに「電子署名形式」を活用。顧客が見積書に署名した場合、通知されるようになり、書面の往来がなくなっただけでなく、環境に優しいペーパーレス化にもつながっている。
「営業部ではkintoneによって効率的になりました。業務に余裕が生まれたことで、従業員は『どのように業績を高めていくか』、『どのようなサービスを提供していくか』など、生産性の向上をめざした戦略を立てるようになっています」(鍾氏)
03. 「データ分析機能」によって顧客や市場のニーズを見極める「データ分析機能」も有用機能という。顧客との価格交渉や契約継続では、過去の実績を分析することが鍵になる。kintoneで「過去の見積り」、「コスト」、「利益」などがグラフ表示によって見やすくなったことで、分析時間を大幅に削減。適切な見積書を迅速に作成できるようになり、顧客との価格交渉や契約継続もスムーズに進められるようになっている。
プロジェクトの進行管理にも貢献している。エンジニアの数や業務量、CVP(コスト・販売量・利益)などさまざまな数値を算出しているが、自動計算によって従業員の手間が減少、間違いも大幅に改善された。結果、市場のトレンドを見極めながら、重点業務に力を注げるようになっている。
「『顧客のニーズ分析』では、間接的に業界で需要が発生するタイミングを見ることができるようになりました。当然、オフシーズンもわかるので、そのときは別の顧客に注力できるのです。『顧客の割合分析』ではお客様のニーズをタイプ別に分析、開発はどの産業に重点を置くべきか判断できます」(鍾氏)。同社の事業戦略に欠かせない機能になっている。
同社の独自アプリが「デイリーミーティング」である。プロジェクトや顧客サービス、社員のタスクを効率的に管理するため、毎朝、各自がその日にやるべきことを「デイリーミーティング」でリマインドする。
「タスクカードを見るだけで、部門や従業員の業務やプロジェクトの進捗が把握できるようになりました。リマインド機能があるので、専属アシスタントのように会社の状況や従業員のやるべきことを知らせてくれます。結果、人的ミスによる請求書の発行漏れや契約更新の通達漏れなどが回避できるようになりました」
「従業員は何をすべきか考えたり、やり方を覚える必要がなくなり、作業効率が大幅にアップしました。作業報告が不要になった分、顧客サービスやプロジェクトについて専門的に話し合う機会が増えて、生産性が向上しています」(陳氏)
達暉資訊の独自アプリ「デイリーミーティング」。従業員のタスクカードが列挙され、作業やプロジェクトの進捗が把握しやすくなった
05. 経営状況の把握によって年間目標達成への軌道修正ができる陳氏にとって、kintone導入の最大のメリットは「常に会社の経営状況を把握できること」という。これまで会議でしか得られなかった情報がkintoneで確認できるようになった。各プロジェクトの人件費や粗利、売上はリアルタイムに年間目標値と比較できるため、戦略を調整しながら営業目標を達成している。
同社の顧客は業種が幅広く、それぞれの分野に合った専門技術が求められる。プロジェクトの成功や顧客満足度の向上に直結するのは、「採用」と「異動」による適正な人材配置である。
「「採用」では「履歴関連分析チャート」を活用しています。面接記録をすべて管理することで、適切なプロジェクトへの配置や重複採用を回避できるようになりました」
エンジニアのスキルが会社のニーズと合致しない場合は「求職者マッチング機能」に登録している。「特殊なプロジェクトが立ち上がったときに、再度声を掛けられるようにしたのです。通常の面接と並行することで、迅速かつ効率的に人材を確保できるようになっています」(陳氏)
07. 社員情報とプロジェクト、顧客管理機能を共有し、人事作業プロセスを改善
「社員情報はプロジェクトや顧客管理システムと自動連携させ、相互検索を可能にしています。過去のプロジェクトから顧客、見積り記録まで迅速にチェックできるほか、従業員のパフォーマンスや成果、提供サービスなども一目瞭然です。これまで情報が不透明で統合できなかった人事作業プロセスを改善できました」(陳氏)
kintoneによって、陳氏や従業員はプロジェクトにマッチした人材を迅速に採用、従業員やプロジェクトの成果も見られるようになり、社内データの価値が高まっている。
kintoneの「履歴関連分析チャート」画面。このチャートをもとに今後の戦略を描いていく
08. 「賞与管理システム」と「経費申請システム」でインセンティブや申請業務を見える化プロジェクト完了によるインセンティブは、営業部のモチベーションアップにつながっている。これまで使用していた外部ソフトウェアには課題があった。正確に計算できないだけでなく、最終段階で初めてプロジェクトのインセンティブを知るため、リアルタイムに金額を照合できなかったのである。
「賞与金管理システム」の導入後は、月別にインセンティブ明細とリソースの検索が可能になった。陳氏は「従業員の貢献度、プロジェクトの成果や利益を把握できるようになりました。今後、強化すべき従業員のスキルなども確認できるようになっています」と効果を実感している。
会計部では「経費申請システム」を導入。これまで進捗は会計部のみが把握していたが、全社員がオンラインで申請中や審査中、完了などステータスを確認できるようにし、申請業務の見える化を図った。
陳氏は「kintone導入によって、生産性と企業価値をより高める戦略を考えられるようになった。とくに、データ分析機能では業務の細部まで見えるようになったことで、より高く、幅広い視点で会社を経営できるようになりました」。同社では、他にも変化が起きているという。
「会社の軸を顧客から自社のエンジニアに移しました。開発経験を共有できるよう、書籍や交流による勉強会を開催。充実した生活を送れるよう、登山やサイクリングなどのレクリエーションも行っています。エンジニアは会社にとって貴重な人材であり、財産です。仕事以外でも自分の価値を高められるよう、仕事と生活が調和した環境をつくりたいと考えたのです。これは我々のエンジニアに対する約束であり、この2年間重視してきた企業文化でもあります」
kintone導入によって、企業の軸を自社エンジニアに移行。エンジニアが開発経験を共有できるよう、勉強会を開催
同社ではkintoneをパートナー企業や顧客と共有したいと考えている。「将来的には、kintoneの機能を拡張するソフトウェアを業界別にカスタマイズした、プラグインを開発できるように考えています。kintoneの利便性によって、半分の労力で倍の効果を生み出せるはずです。これまで費やしていた作業や時間で営業戦略を考え、お互いに企業価値を高めていきたい」と将来を見据えていた。