
【業務内容】
研究開発
【利用用途】
研究開発に関するデータ管理
獅王(上海)創新科技有限公司は、オーラルヘルスケア用品の分野で圧倒的なブランド力を誇る日本屈指の生活用品メーカー「ライオン株式会社」の中国における研究開発拠点です。スピーディーに競争優位性の高い製品を開発することを目的に、2023年5月に設立されました。
中国市場を最重要海外市場の一つと位置付ける同社において、「生活者研究」を起点とした研究開発に加え、市場変化の速い環境下でスピードの向上も求められる中、どのようにDXに取り組んでいるのか。
今回は、kintone導入の背景や導入効果について、総経理の奥田氏をはじめ、友松氏、キム氏にお話を伺いました。

獅王(上海)創新科技有限公司
董事・総経理 奥田 靖 氏
1999年ライオン入社。オーラルヘルスケア研究所に配属後、明石工場でハブラシの生産技術を経験し、再び研究開発に従事。海外製品開発やグローバル開発センターでの業務を通じて各国の製品開発を担う。2024年に上海へ赴任し、獅王(上海)創新科技有限公司の董事・総経理として現地の研究開発を統括。
創新開発部 部長 友松 公樹 氏
2008年ライオン入社。ビューティケア分野で制汗剤やスキンケア、ヘアケアの開発に従事し、国内外製品を担当。グローバル開発センターを経てオーラルヘルスケア領域へ異動し、中国向けハミガキや新価値創出に取り組む。青島駐在を経て2024年より上海に赴任し、価値・技術開発、ビューティケア製品開発、香料開発を統括。
オーラルヘルスケア製品開発部 キム・リュンヒ 氏
韓国出身。大学院時代に日本留学後、 2021年にライオン入社。グローバル開発センターにて海外市場向けハミガキ開発に従事し、インドネシアや韓国などを担当。開発効率化を目的としたAI活用やベイズ最適化の検討にも携わる。2024年より上海に赴任し、ハミガキ開発や、研究開発におけるデータ基盤の構築とデータドリブンな研究DXの推進を担う。

研究所立ち上げ当初は、LION日本本社や青島拠点からの配属メンバーに加え、立ち上げ後に新たに採用されたメンバーなど、バックグラウンドの異なる人材が集まっていた。そのため、各自が管理する研究データもExcelや紙など管理方法が統一されておらず、バラバラな状態となっていた。
「長く同じメンバーで働いていれば、どこに何があるか把握できていたと思いますが、それぞれにしか分からない状態でした。」(キム氏)
また、提出書類の作成フローにも課題があった。組成をまとめる企画書類や社内申請書類、国への届出書類など、用途ごとに異なるフォーマットが存在しており、書類作成のたびに転記作業が発生していた。その結果、ヒューマンエラーのリスクも高まっていたという。
「データを一元化し、人の手を介さずに業務を進めることで、ミスを防ぐ必要があると感じていました。」(奥田氏)
こうした課題を背景に、デジタルを活用した解決策を模索するため、社内外の有識者へのヒアリングや他社のデジタル活用事例を参考にしながら、自社に適したアプローチの検討が進められた。
システムの選定にあたっては、複数社をピックアップした。新設されたばかりの組織であるため、メンバーに独自の業務習慣が定着する前に、またデータ量が少ない段階で導入を進めたいという意向があり、検討はスピーディーに進められた。
「こちらがやりたいことを伝えたうえで、操作性やコスト面を比較検討し、kintoneの導入を決めました。」(友松氏)
決め手となったのは、コスト、スピード、そしてサポート対応の良さだったという。中でも、サイボウズの担当者による迅速かつ丁寧な対応は、高く評価された。
「今ならやれる。今ならスムーズにデータ化できる。できるだけ早く取り組み、紙ベースのデータ管理をやめたかったのです。」(奥田氏)
「データをつなぐこと」をコンセプトに、kintoneアプリの構築を開始。ハミガキの原料情報や処方情報、備案情報などをデータベース化し、用途に応じてデータを連携・活用している。また、データ登録時に発生していた転記や計算作業は自動化することで、ヒューマンエラーの防止を実現した。
自動化にあたっては業界特有のプロセスも多く、kintoneの標準機能だけでは対応が難しい部分については、開発によって自社の業務に合わせた形にカスタマイズしている。
「そういう面で、自社の管理方法に合った形で構築できるkintoneが最適でした。カスタマイズが必要でしたが、担当者間で密にコミュニケーションを取りながら進めることで、理想の仕様を早期に実現することができました。」(友松氏)
導入時の社内メンバーの反応については、新たなシステム導入に対する大きな反発はなかったものの、各メンバーの要望が多様であり、そのとりまとめには苦労したという。
「みんな興味を持っていて、期待感を持ってくれているがゆえのリクエストでした。」(友松氏)
また、中国拠点ならではの特徴として、デジタル活用への受容度の高さも感じられた。
「デジタルに対してとてもオープンマインドだと感じました。これほど多様な意見がでてきたことも、生活の中でデジタル化が進んでいる影響が大きいと感じました。」(キム氏)

原料規格のデータベース一覧。情報を一元化するとともに、ステータスを可視化している。
ステータスが「完了」となったレコードは、編集できない仕組みとなっている。

“item check”アプリには、”Formula Card”のデータを連携して登録できるよう設計。
①ボタンを押して転記したい情報を選択することで、必要な情報を瞬時に登録できるようになり、手動での転記作業が不要となった。
また、データ登録完了後、②「Excel出力」ボタンをクリックすると正式書類のExcelフォーマットにデータが反映され出力されます。

“item check”アプリのステータスが「完了」になると、①”Formula table for proposal”ボタンが表示される。
このボタンをクリックすることで、必要な情報が自動連携された新規レコードを瞬時に登録でき、ミスなくスピーディーに業務フローを進めることが可能となる。
このアプリでも②「Excel出力」ボタンを設置し、正式書類の出力に対応している。
導入後、効果はすぐに現れた。社内関連部署とのやり取りでは、以前は1案件あたり約10件の確認や修正が必要な場面もあったが、kintone導入後は多くても1件程度にまで減少し、ほとんどが一度のやりとりで完結するようになった。
また、書類作成の工数も大幅に削減された。正式書類が4種類あり、従来はすべて作成するのに約1週間を要していたが、現在では約2時間で完結できるようになった。
「データの転記作業がなくなったことで、アウトプットの正確性が一気に向上しました。時間の面では相手側の工数も削減できているため、組織全体として大きな改善だと感じています。
そして何よりも、気持ちの面で大きな変化がありました。これまではミス防止のために3人でチェックを行っており、“疑いの目”で確認せざるを得ない状況でした。その結果、見えないストレスや待ち時間が発生していましたが、現在はそうした負担もなくなり、非常に前向きに業務に取り組めています。」(キム氏)
kintoneの活用により、チームメンバーの検討プロセスが可視化されるようになった。以前は各自が紙で管理していたため、各メンバーのタスクの進捗が見えづらかったが、現在はリアルタイムで状況を共有できるようになっている。
さらに、原料や配合の違いも可視化されることで、議論のしやすさが向上。従来はExcelデータを集計し、報告資料を作成する必要があったが、その工程も不要となり、議論のスピード自体も大きく向上した。
「単に最終データを残すだけでなく、途中のデータも蓄積していくことを期待していました。検討過程において、この組成がどの物性に紐づくのかといった傾向も一元管理できるようになり、今後はビッグデータとして活用できることを期待しています。」(奥田氏)
今後は、ハミガキにとどまらず、他の研究分野にも活用を広げていきたいと考えている。
また、研究領域に限らず、バックオフィスを含むさまざまな業務分野にも展開し、ノーコードの利点を活かした業務効率化をさらに推進していく方針だ。