【業務内容】
模倣対策・知財保護、中国法務、中国ビジネス・サポートのコンサルティング
【利用用途】
案件管理、スケジュール管理、ファイル管理
IP FORWARDグループは中国における模倣対策や知財保護のプロフェッショナルだ。日系企業が中国で販売する商品は必ずといっていいほど模倣品や海賊版が出回る。それを野放しにすると商品やブランドの毀損だけではなく、事業収益にまで影響が及ぶことになる。2011年創設の同社では、そうした課題を抱える日系企業を対象に模倣対策の調査から法務まで一気通貫で知財保護のサービスを提供。クライアントによって多種多様な内容の複数案件が同時平行で進むため、それらの案件管理にkintoneを活用している。
今回は、ご自身が弁護士であり弁理士でもあるグループ代表の分部氏に、kintoneの活用方法と合わせて、中国の模倣品の現状とその対策についてお話を伺った。
中国の模倣品は日系企業にとって対策すべき重要な事業課題だ(左)
IP FOWARDグループ総代表・CEOの分部氏(右)
IP FORWARDグループは主に日系企業の模倣対策や知財保護をサポートしている。中国での模倣品や海賊版は一般的にイメージされるブランド品やDVDなどだけに限らず、今や化粧品や食品、日用品から自動車部品やベアリングといった工業製品にまで多岐にわたって存在している。IP FORWARDグループでは、こうした中国の市場環境を前提として日系企業が如何にして中国事業を展開していくべきなのか、また実際にすでに模倣品が出回っていないか、もし模倣品がある場合はどのように対処すればいいのか、といった基本的なビジネスのサポートから具体的な調査、さらに法務的な手続きまで各段階をワンストップで支援している。
東京大学在学中1999年司法試験合格、00年同大学経済学部卒業。06年から09年まで経営産業省模倣品対策室に初代模倣品対策専門官として出向し、中国および東南アジア諸国等の知財法制度の調査を担当。09年渡中後、模倣品対策専門調査会社、中国律師事務所での勤務を経て、IP FORWARDグループを創設。現在、同グループを統括すると同時に、多くの日本・欧米企業に対して、中国、知財に係る問題を中心にサポートしている。
「なかでも模倣対策に特化した長年の経験から、模倣品を製造する工場を探し出すなどの調査には強みがあり、さらにその工場の摘発や訴訟といった法務でも専門性も備えていることが当社の強みです。私自身が弁護士であると同時に弁理士でもあり、IP FORWARDグループは日本弁護士・弁理士経営の事務所として、唯一、中国で、商標代理事務所資格を取得して、日系企業の商標出願もお手伝いしています」(分部氏)
IP FORWARDグループに模倣対策の相談を寄せるクライアントは日系企業が中心だ。そのうち日本本社の知財部や法務部が7割近くに上る。そのため、一概にはいえないが、どうしても事前の調査やそれに伴う計画が念入りになりすぎる傾向が否めないという。「中国では必要最低限の調査は必要ですが、そこから先は”やってみなければ分からない”というのが実情です。クライアントである日本本社のご要望には最大限にお応えする前提ですが、あえて無駄な調査に時間を費やさず、そのビジネスにとって致命傷にならないように瞬発力をもって慌てず堂々と対処することが、これまでの経験上、非常に大切なことです。そうした”日本の方々が理解し難い状況をいかに分かり易くお伝えするか”が、経験豊富なIP FORWARDグループのノウハウの一つといっていいかもしれません」と分部氏は説明する。
IP FORWARDグループ総代表・CEO
IP FORWARD法律特許事務所
代表弁護士・弁理士
IP FORWARD China
(上海擁智商務諮詢有限公司)
董事長・総経理
分部 悠介(Yusuke WAKEBE)氏
模倣品の製造工場を行政摘発する段取りも手掛けている
中国における訴訟全体の件数及び知的財産権侵害訴訟の件数は、ともに、近年、急激に増加しており、IP FORWARDグループでも、特許権をはじめとする専利権や商標権、著作権侵害に基づく訴訟案件の取り扱い件数が年々増加している。一口に「模倣品」と言っても、従来は、商標の単純なデッドコピー品が主流であったのに対し、近年では、商標権侵害は回避しつつも、日本企業の製品の技術やデザイン、すなわち、特許権や意匠権等を侵害するケースが増えているという。模倣の手口も複雑、高度化しているというわけだ。
また、ここ最近ではこうした日系企業の模倣対策や知財保護の経験から派生した新たなニーズも生れているという。日系企業が持つ高い技術や豊富なコンテンツを合法的に中国企業が求めるケースだ。例えば昨年(2015年)、中国電子商取引最大手のアリババが動画サイト向けのコンテンツとして、日本の人気漫画「ドラゴン桜」をドラマ化する権利を取得した。その版権を持つ日本の会社とアリババの間に入ったのが、分部氏率いるIP FORWARDグループだ。「日本では価値を生まなくなったが、中国では活用できる技術やコンテンツが多く存在しています。そうした権利や版権を持つ日本の企業とそれを求める中国の企業にとってお互いの利害がマッチするよう引き合わせることが今後増えてくると考えています」(分部氏)
IP FORWARDグループはコンサルティング会社、弁護士事務所、そして弁理士事務所が一体となり、模倣対策や知財保護に関する業務を一気通貫で手掛けている。そのため、同じクライアントであっても同時に複数の案件を請けて進めることも少なくなく、当然ながらグループ全体で見ると複数のクライアントによる複数の案件が様々なステイタスで同時進行している。例えば、A社は調査、B社は調査と訴訟、C社は調査と訴訟と商標登録といった具合だ。クライアント毎の案件管理ではそれらに紐づく項目(案件内容・エリア・進捗状況・納品期限等)の種類が多く、また案件毎に担当するグループ会社や部門が異なる。そのため、納品や請求といった案件の進捗に伴い発生する業務管理が非常に煩雑に感じていたという。
「以前はこれらをエクセルで管理していましたが、複数人が同時に利用できませんし、また案件の記入漏れやダブりがあったり、場合によっては請求漏れが発生することもありました」(分部氏)
また従業員の増大に伴うスケジュール管理も頭を悩ませていた課題の一つだ。立ち上げ当初20名だった従業員規模は現在は倍以上の50名。調査など出張するスタッフも多く、スケジュールもさることながら、その申請や承認といったプロセスもエクセルでは限界を感じていたという。
そうした課題を解決するため、IP FORWARDグループは2014年2月にkintoneを、2014年3月にGaroonを導入した。kintoneではこれまでエクセルで管理していた案件管理を中心に、Garoonでは従業員のスケジュール管理や出張や残業などの各種申請・承認業務に活用している。kintoneに対する分部氏の一番の評価ポイントは「設定が非常に用意で、かつ操作性が高いこと」だという。加えて、「一つの案件が持つ実に様々な項目の情報をkintoneを利用して一元的に案件管理を行うことで案件の特定が容易になりました」と(分部氏)とその具体的な効果を説明する。
また、IP FORWARDグループが展開するコンサルティングや調査といったサービスは納品が時として非常に曖昧になる傾向がある。そのため、従来のエクセルによる管理では納品と請求の業務が十分に連携できず、以前は「請求漏れが発生していた」(分部氏)という。しかし、kintoneによる管理に移行後、案件のステイタスが各部門で同時に確認できるようになり、部門間の案件のバトンタッチもスムーズに行えるようになったため、そうしたミスがなくなった。さらに、「弊社は営業部員を多く抱えて積極的に営業活動をバリバリと行う会社ではないため、従来は売上管理やそれらの数値を材料とした経営管理も手薄だったのが正直なところです。kintoneでの案件管理では、そうした経営の観点から必要となる売上管理も導入前に比べて手軽に行えるようになったと感じますね」と分部氏は経営者としてのメリットを実感している。
Garoonでは導入前に課題としていた従業員のスケジュール管理や出張や残業などの申請・承認業務が滞りなく行えるようになったばかりではなく、社内のファイル管理にも活用している。分部氏はその経験から年間で決して少なくない数の講演を依頼されることが多い。そうした講演資料などを講演する出張先で確認したり、また資料を追加したりといった作業が、いつでもどこでも使えるクラウドサービスのGaroonで実現することができたという。
模倣品や知財保護に関する多種多様な案件をkintoneで管理している
案件管理から各顧客への見積り額を集計して経営資料に活用している
出張や残業などの各種申請はGaroonで行うことで業務を効率化(画像は休暇申請)
社内で使用するドキュメントや会社案内などの各種資料をGaroonでファイル管理している
現在の中国では模倣品は増えることはあっても減ることはない。一方でそうした模倣品に対する法的な整備が徐々に整いつつあり、中国政府による模倣品の取り締まりもここ数年で強化されてきている。しかし、法律で解決できないことがまだまだ多いのが中国。IP FORWARDグループは長年の模倣対策で築いてきた中国の関連機関との関係を通じて、法律を十分に加味しながらもより、「法律だけに捕らわれない現実的なアドバイスで日系企業の中国ビジネスをバックアップしていく」(分部氏)という。