【業務内容】
エレクトロニクス製品の販売
【利用用途】
申請業務、勤怠管理、予約管理
台湾大日本印刷股份有限公司は、日本の大日本印刷株式会社の販売会社として1998年に設立された。取扱製品はエレクトロニクス関連。日本で製造したディスプレイや半導体の部品・部材を、台湾のハイテク企業に販売している。総経理 林 昭彥氏が「2019年からは大日本印刷株式会社がライセンスを管理する世界的な人気画家の企画展を主催している」というように、新たな事業も始めた。
同社では申請業務をExcelで運用していたが、2018年にkintoneへ移行する。その経緯や効果について林氏、管理部マネージャー 清水 甲氏、管理部主任 廖 千惠氏にお話を伺った。
総経理 林 昭彥氏
同社では、外勤営業が従業員の2/3を占める。当然、外出や出張が頻繁にあり、オフィスに出勤できないことも多い。その中で出張や経費、有休などの申請業務をExcelで運用していたが、さまざまな課題が表面化していた。
「全部で3つありました。1つは不便さです。Excelの場合、申請者も承認者も必ずオフィスで提出・承認しなければならず、使い勝手が良くありませんでした。2つ目は形骸化です。外出・出張が続く場合、どうしても事後申請や事後承認が増えてしまい、本来のルールが守られなくなっていました」
「最後はガバナンスの問題です。提出後に変更があった場合、手書きで修正する人もいれば、再提出する人もいました。管理側は承認者が修正内容を把握しているのか、どれが最新の申請書なのかわかりにくく、混乱の元になっていたのです」(清水氏)」
こうした課題を解決するには、運用方法の見直しが必須だった。めざすのはユーザーと管理者の双方にメリットがあるシステムづくり。清水氏がリーダーとなり、働き方改革の一環として進めていった。
清水氏がkintoneを知ったのは、大日本印刷株式会社からの紹介だった。海外拠点の上海とアメリカのオフィスでは導入しており、実際のアプリ画面も見せてもらったことで、導入後のイメージが掴みやすかったという。「外勤営業には便利なシステム」と後押しされ、kintoneを導入する。
「導入の決め手は2つでした。1つは、従来の申請業務をすべてkintoneに集約できること。経費や勤務など用途別にシステムを導入するよりも、イニシャルコストを大幅に削減できます。ユーザーにとってもシステムが1つだけの方が使いやすいと思いました」
「もう1つは、アプリ画面を自由にカスタマイズできること。Excel時と同じ内容、レイアウトで設計すれば、ユーザーは混乱なく操作できます。管理側もわざわざ説明会やマニュアルづくりをする必要もない。魅力的なシステムと認識し、kintone導入を決めました」(清水氏)
驚くことに、初期導入からすべての申請業務をアプリ化したという。グループ会社で効果が実証されており、清水氏も有用なシステムと捉えていたため、一気に進めた方が良いと判断したのである。
「当時のご担当は、サイボウズ台湾の曽根支店長でした。申請書をまとめていたキングファイル10数冊を提示しながら、すべてのアプリ化をお願いしたところ、『これを一気にアプリ化するのですか!?』と驚かれていました」と、清水氏は振り返っていた。
管理部マネージャー 清水 甲氏
台湾大日本印刷のkintoneポータル画面
現在は14アプリを従業員全員が使用している。林氏は「非常に便利になった」と称賛。清水氏も「いつでも、どこでも確認できるようになりました。過去の資料も年度別に表示できるソート機能があり、ラクになっています」と実感していた。とくに、導入効果が上がっているのは月間経費精算書と有給休暇申請書という。
「月間経費精算書には課題がありました。3,000元以上の経費を使用する場合、大口経費申請書を提出します。接待の時は開催理由や得意先、参加する従業員の役職・氏名、接待場所を記入するのですが、月間経費精算書にも同じ項目があり、二度手間になっていました。アプリでは双方の重複項目を自動連携するようにカスタマイズしたのです」
「当月の社内レートを登録したレートマスターというアプリも自動連携させました。海外出張で外貨を使用した時は、台湾ドルに換算します。Excelの時は、私が配布する当月の社内レートをもとにユーザーが計算しなければならず面倒でしたが、アプリでは入力するだけで台湾ドルに自動換算するようにしました」
月間経費精算書の入力確認画面。
海外出張で使用した外貨が自動的に台湾ドルに換算される仕組みにしている
「従業員からは『手間や面倒が減り、心理的ハードルが下がった』という声が上がっています。実際、提出率が大きく改善しました。提出期限は毎月第4営業日で、Excelの時は60~70%でした。kintoneでは第2営業日までに90%、第4営業日はほぼ100%になっています」(清水氏)
管理側も恩恵を受けているという。提出の前倒しによって、月次決算の締めが平均して2営業日短縮、余裕を持って本社に報告できるようになった。外貨換算も計算間違いがないため、電卓でチェックする必要がなくなっている。
02. 自動計算で管理者の作業効率をアップ有給休暇申請書は、アプリ化によって利用率がアップした。管理者の廖氏は、クラウド化が最大の理由と分析する。「従来の運用は紙でした。有休を取得する場合、申請者は必ず総務部に声を掛けなければならず、少なからず取得しにくくなっていたはずです。その障壁がkintoneによってなくなりました」
「他方で、総務部の負担も軽減されました。業務面では確認も管理も容易になっています。心理面でも従来はいつ声を掛けられるかわからず、外出や休暇を躊躇うことがありましたが、その心配がなくなりました」
有給休暇申請書も自動計算するようにカスタマイズしている。2016年12月、台湾における労働基準法が改正。期末時点で労働者が年次有給休暇を未消化だった場合、その分を企業が買い取ることになった。そのため、会社と従業員が年次有給休暇の残時間と会社の買い取り時間を正確に把握しなければならなかったのである。
「弊社では有給休暇を30分単位で取得できます。6〜9月には40時間の夏季休暇制度があり、利用した場合は会社の買い取り時間から控除するため、手計算では煩雑過ぎて限界を迎えていました。そこで自動計算を取り入れ、管理しやすくしたのです」(清水氏)。どちらのアプリも共通して、ユーザーと管理者の双方が運用しやすくなっていることが大きな成果につながっていた。
管理部総務 廖 千惠氏
特休假單的輸入畫面
03. kintoneは当たり前の存在で、社内インフラとして定着kintone導入によって、同社が抱えていた課題は解決した。とくに、事後申請は大幅に減少したという。清水氏は「スマートフォンやパソコンから利用できるため言い訳ができなくなり、圧倒的に事前申請が増えました。弊社ではkintoneは当たり前の存在で、社内インフラとして定着しています。少なくとも今後5年は別のシステムで運用するつもりはありません」と説明する。
コロナ禍においてもkintone導入はメリットになっていた。2021年5月、台湾全土における感染状況の警戒レベルが第3級になる。政府から企業に対して可能な限りの在宅勤務の要請があり、その協力を当日中に決断した。「ファイルサーバーからクラウドシステムへのデータ移行もありましたが、kintoneの存在が最も大きかったです」(清水氏)
現在は管理部主導のため、その視点でのアプリが多いという。「他社では在庫管理や顧客管理など幅広く使われています。アプリもカスタマイズできるため、可能性は無限大と言えます。サイボウズ台湾さんに営業部門や技術部門に適切なアプリをご提案いただきながら、kintoneを活用した社内ソリューションを起こしていきたいです」と清水氏はこれからの展望も語っていた。