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上海博邦知識産権服務有限公司 様

知的財産権に関する業務をワンストップで提供kintoneで年間1,500件の案件プロセスを管理してデータ統計も容易に

【業務内容】

知的財産権の登録・侵害対策

【利用用途】

案件プロセス管理、ファイル管理

会社概要

上海博邦知識産権服務有限公司は2000年の設立以来、一貫して知的財産権に関連する業務を提供する。とりわけ、模倣品による知的財産権侵害への対策に強みを持ち、主に中国に進出する日系企業をクライアントとして実態調査から行政による取り締まり、場合によっては訴訟までワンストップでサポートする。上海を本部に中国国内に北京・広州(広東省)・義鳥(浙江省)・瀋陽(遼寧省)・長沙(湖南省)の5拠点、海外はシンガポールに拠点を構える。kintoneの利用を主導した創業者の林祝平・董事長兼総経理に組織として抱えていた課題とkintoneの利用用途、その効果についてお話を伺いました。(取材:2018年6月)

今回は知的財産権の登録・侵害対策をはじめとするサービスを提供する上海博邦知識産権服務有限公司様にお伺いしました。

事業紹介

模倣品による商標侵害から更に複雑な分野へ
日系企業の中国における知財保護をサポート

知的財産権国家戦略要綱を掲げ、国として知的財産権創作・保護を強く推進する中国。商標や特許、著作権にまつわる関連法規など法整備は急ピッチで進んでいる。例えば、商標の侵害行為に対する損害賠償金額の裁判官自由裁量の上限は「以前は50万元だったのが2014年5月施行の商標法では6倍の300万元に引き上げられている」(林総経理)など侵害業者への処罰は一段と厳格になってきている。

だが、模倣品をはじめとする知的財産権侵害は後を絶たない。林総経理は、「従来の実店舗から今はタオバオ(淘宝)などのオンラインにその販売の場が移り、2000年代にプレゼンスが高かった日系企業の家電製品から、最近は電子部品やサービス業へと模倣される分野も変化している」と説明。侵害対策の依頼や訴訟件数はむしろ増えているという。

上海博邦知識産権服務有限公司の林祝平・董事長兼総経理

上海博邦知識産権服務有限公司が当局による検査に協力した模倣品の取り締まりの現場

例えば、衣料品チェーンでは商品そのもののコピーに留まらず、看板を模して店舗自体をコピーされるケースもある。「お客様の依頼に基づき、まずは実態調査を実施する。この衣料品チェーンの場合、山東省や天津市など全国に店舗の模倣が発見されたため、工商局へ通報して看板を変えさせるよう行政の取り締まりを行った」。近年は商標だけでなく、意匠や特許といった更に複雑な法律分野での侵害が増加する傾向にある。こうした案件は訴訟に発展することも多く、上海博邦知識産権服務有限公司は更に知財に強い法律事務所と連携する体制を整え対応している。

導入前の課題

エクセルによる案件のプロセス管理に限界
特殊な業容に合うカスタマイズ性を重視

事業が順調に軌道に乗り、従業員の増加による企業規模の拡大に伴って林総経理が明確な課題として認識し始めたのが社内の情報共有だ。例えば、案件のプロセス管理。従来はエクセルに頼っていたが、「各担当が抱える案件をそれぞれエクセルで管理し、必要に応じて共有するという方法では効率が非常に低く、組織として限界を感じていた」と振り返る。

さらにその不便さに拍車をかけたのが、エクセルで管理する案件をデータとして統計する場合だ。まずは各担当が自身のエクセルで統計し、そのデータを集計して別のエクセルを作成するというのが従来の方法。しかし、「統計に不正確な数値が一つでもあると、改めて個々のエクセルを統計し直して、また全体のエクセルを修正するという繰り返し。定例の月次の統計では、この作業を会議の3日前から行っていた」(林総経理)という。

実はkintone導入以前に中国系の業務ソフトでこれらの改善を図ろうとした経緯がある。だが、その特殊な業務内容ゆえに管理する情報が一般的な業務ソフトでは対応できず、3年足らずで利用の継続を断念した。自社の業務に合わせて柔軟に仕様をカスタマイズできること。林総経理が次に導入するツールに求めた絶対条件だ。そして2013年、「カスタマイズ性の高さに一目でぴったりだと感じた」とkintoneの導入を進めた。

利用用途
【案件プロセス管理】

顧客名称や内容、依頼日、主管部門といった各案件の基本情報に加えて、それぞれの案件の進捗状況を管理する。例えば、調査案件であれば、「調査前」「調査中」「調査完了」といったステイタスが設けられ、その調査報告がクライアントに対して「報告前」なのか「報告済み」なのか、また請求書の発行が「処理前」「処理中」「処理完了」であるかなどのプロセスが一目で分かる。部門毎の業績やステイタス毎にデータを統計するだけではなく、次に必要な業務が可視化されることで案件の計画的な進行に一役買っている。

案件プロセス管理の案件一覧

案件プロセス管理では各案件の詳細なプロセスを管理する

案件プロセス管理のデータを統計して会議に使用する

【ファイル管理】

業務マニュアルや新しい関連法規の情報をkintoneに集約して管理する。業務マニュアルは各部門の業務全般から請求書の発行や実態調査のプロセスといった業務毎の細かなマニュアルが整えられ、いつでもどこでも誰でもが確認できるようkintoneにアップしている。一方、業容上、常に最新情報を把握して全社で共有しておく必要がある関連法規は、kintoneで一元管理し続けることで情報の蓄積がなされて自社のデータベースとしても有用だ。

ファイル管理では業務マニュアルや新しい関連法規の情報を一元管理する

導入の効果

「スピード」と「見やすさ」を実感
資料保管のコストも三分の一に削減

林総経理が実感するkintone導入による効果が「スピード」と「見やすさ」だ。以前のエクセルによる管理では、マネジメント側が指示してから2~3日間は要していたデータの統計が、「前月比や前年比などのデータが知りたいと思った時点で瞬時にグラフで把握できる」と太鼓判を押す。従前は3日前から作業を始めていた月次会議の準備も、「前日にkintoneで管理するデータを切り取れば資料にできる」と大幅な作業効率の向上を実現した。

また、取り扱う情報の多くが機密事項のため、その管理には相当高いレベルが求められるが、kintoneは業務内容や役職によってアクセス権が柔軟に設定できることから十分な体制を整えられている。

一方、現場で自身の案件を管理する従業員にとっても、クラウドサービスのkintoneで案件プロセスを整理することによって、いつでもどこからでも「次に何を行うべきか」が一目で分かり、日々の業務の指標になっている。

上海博邦知識産権服務有限公司の銭旻
登録事業部経理 弁護士 商標代理人

さらに、コスト削減の効果も大きい。その業容から調査案件の報告書や商標登録の申請書など日常的に膨大な資料が発生し、なおかつ長期間の保管が重要なため、紙のファイリングを長らく続けていた。だが、それらの資料を電子ファイルとしてkintoneで一元管理することで、印刷用紙やインクのコストもさることながら、保管場所も大幅に縮小。「資料の保管にかかるコストはkintone導入前の三分の一にまで削減できた」と強調する。

成功ポイント

マネジメント側の意向を一方的に通さず現場社員の理解と評価を得て導入・運用

セミナーでkintoneを知り、「これなら課題を解決できる」とすぐに感じた林総経理。しかし、トップダウンによる強硬な導入には決して踏み切らなかった。社内の多くが参加するミーティングにサイボウズ中国のスタッフに参加してもらい、自身がセミナーで聞いたkintoneの利活用について改めて現場に説明する機会を設けたのだ。

その理由について林総経理は、「マネジメント側と現場の社員の利便性は必ずしも一致しない。トップの一存ではなく、導入後のスムーズな運用を念頭に現場の理解と評価を事前に得ることを考えた」と説明する。

導入に際してマネジメント側と現場の合意形成は十分に図ったものの、それでも実際の運用に際してはkintoneの高いカスタマイズ性ゆえにマネジメント側の要望を詰め込み過ぎて現場の作業負担を増やしかねない危惧があった。例えば、案件のプロセスを細かく把握したいマネジメント側の意向だけを突き詰めると、進捗状況を表すキーワードが増え、現場の入力作業の手間が増える。「現場の負担に見合う価値がそのデータを得ることにあるか。その必要性を双方でしっかりと理解するように努めている」。

将来の展望

kintone上の案件プロセスを顧客に公開して業務の透明性と顧客対応の省力化を図る

kintone導入から5年。社内での利活用がすっかり定着した今、林総経理が次に考えるのがクライアントと情報共有する場だ。具体的な構想の一つが案件プロセス管理を公開して、クライアントが依頼した案件の進捗状況を自身で確認できる仕組みである。目的はプロセスの透明性の確保と顧客対応の省力化だ。「弊社のkintoneにお客様が直接アクセスして確認できればお互いの業務のスピードが更に上がる。実際のニーズもある」。

一方、ファイル管理は部門によってバラつきがある業務マニュアルの整備を急ぐ。現在は人事部門において人材の採用や育成に関するマニュアルを作成中。早晩、kintoneのファイル管理にアップする予定だ。

事業は知財に関するワンストップサービスに一段と注力する。「商標や特許の登録や侵害対策に加え、所有する特許の有効活用も提案していく。現在の中国は訴訟がますます増える可能性が高い。案件はさらに複雑かつ高度になるため、kintoneによる管理が一層重要になる」。

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