
【業務内容】
総合物流企業
【利用用途】
稟議申請、文書管理、顧客・仕入先管理、経費精算など
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社は、1937年創業の国内外で総合物流サービスを展開する総合物流企業です。 「We Find the Way」という企業メッセージのもと、陸・海・空の多様な輸送手段を駆使し、貨物輸送、倉庫保管、引越、国際物流など幅広いサービスを提供しています。
世界57の国・地域に拠点を持ち、従業員数は78,000名を超えます。そして東アジアリージョン(中国本土・香港地区・台湾地区・韓国)では、42法人・58都市・203拠点・5,621名の体制で、グローバルな物流サービスを展開しています。(2025年3月末時点)
グローバルなネットワークと豊富なノウハウを活かし、お客様のサプライチェーンの最適化や効率化を支援しています。また、環境対応やデジタル技術の導入にも積極的に取り組み、持続可能な物流の実現を目指しています。

近年、事業の拡大や外資規制への対応で、事業会社や支店の設立が増え、管理強化のためコーポレート部門も新設されるなど、組織はますます複雑化していました。その結果、現場では多様な業務が発生し、各拠点・部門間の連携や情報共有が大きな課題となっていました。
例えば、稟議申請の際には、紙の申請書を持って社内を回り、上司の出張帰りを待って承認をもらう「スタンプラリー」が日常的に行われていました。契約書や見積書は紙で保管され、場合によっては個人PCに保存されることもあり、情報の分散や管理の不安が常につきまとっていました。そんな中、新型コロナウイルスの影響で、従来の紙ベースの業務遂行が困難となりました。
コロナ禍で紙が使えなくなったことで、業務フローに潜んでいた問題が一気に表面化。この状況を人海戦術で乗り切ろうとしたことで、意思決定の遅れや情報共有の難しさが現場の悩みとなっていました。
この状況を打開するため、ペーパーレス化と業務効率化を実現できるシステムとしてkintoneの導入を決定。富士フイルムビジネスイノベーションとサイボウズによるコラボ提案を採用し、複雑な業務フローを自社の社員がノーコードで構築できる点や、東アジア域内での国・地域を超えた伴走サポート体制が決め手となりました。
「市況が悪いときこそ、次にジャンプできるよう、一度しゃがみこんで社内の問題点を見直す」というトップの強い意志のもと、kintoneを核にした業務フローの見直しに投資することが決定。まずは統括本社約80人のスタッフでの運用をスモールスタートしました。
今回は、kintone導入の背景や活用効果について、NX国際物流(中国)東アジアリージョン 佐久間氏にお話を伺いました。
NX東アジア有限公司
経営戦略本部 経営企画部・財務部
副部長
佐久間 英人 氏
2021年より現職。着任後はコロナ禍の中で、「ペーパーレス」にとどまらないグループ全体の業務改善プロジェクトを牽引し、導入から2年で2,000ユーザーまで運用を拡大した。
初めての中国赴任は2006年で、今回が3度目の中国赴任となる。趣味は旅行で、中国国内のさまざまな地域を巡り、全省制覇まで残すところあと2省となった。
業務アプリはリージョン共通アプリと事業用アプリの大きく2つに切り分けて運用。その中でも「顧客マスタ管理アプリ」と「仕入れ先管理アプリ」が全体の中核となっている。※以下、アプリの概要図は導入当時の内容

まず稟議申請アプリの開発に着手。申請内容には人事や投資など機密情報も含まれるため、レコードの公開範囲を厳格に設定できるようにした。また、日本人駐在管理者は数年ごとに交代するため、後任者が前任者の申請・承認した稟議履歴を確認できるような工夫も行っている。
そして、稟議として必要な内容を漏れなく網羅する固定フォーマットを採用。これにより、申請者・承認者双方の記入や確認に係る負担を軽減した。
稟議申請アプリ
組織の複雑化に伴い、承認ルートも非常に長くなり、最大15段階の承認が必要なケースも出てきた。そこで承認までの時間を短縮する方法として合議(並列申請)を組み合わせることで、複数部門の承認を同時進行で進める仕組みを採用。承認までの大幅な時間短縮に成功した。
また申請フローの元になる承認マスタについては、部門内の承認フローをユーザー別に規定した社員マスタと、部門別の承認フローを部門マスタとして定めて、2つの承認マスタを組み合わせて運用している。

稟議申請アプリの稼働後、次に取り掛かったのは「顧客マスタ登録アプリ」と「仕入れ先マスタ登録アプリ」の開発だ。同社では新規取引を開始する際、与信取引の場合は、調査会社から信用調査報告書を取り寄せ、信用状況に応じて与信限度額を設定。その後お客様と契約書を締結し、顧客マスタに登録する流れとなっているが、信用調査を行わずに与信取引申請を行うことや契約書を締結せずに取引を開始することが起こらないように複数のアプリを連携させ、プロセスでリスクを制御した。
また、仕入先マスタに関しては、仕入先の品質評価をプロセスに組み込み、品質を担保できる仕入先を選定することでお客様の貨物へのダメージや遅延を発生させない仕組みを構築。
kintoneが得意とするアプリ間のデータ連携機能を活用し、各アプリで承認されないと次のプロセスへ進めないようにすることでガバナンスの確保と品質向上に努めている。


顧客マスタ登録アプリ
各アプリの申請状況を連動させて可視化。
全ての承認が完了していないと顧客マスタの登録申請ができない仕様になっている。
顧客マスタと仕入先マスタ申請の一番初めのプロセスである 「信用調査報告申請」では、ここで滞留しないよう簡素化が必須だった。そこで、外部調査機関に権限を制限したkintone IDを発行し、調査結果を直接kintone上に貼り付けてもらうフローにした。結果、メールでの依頼業務が軽減され、財務担当者の業務負荷が大きく軽減され、全体のリードタイムの短縮にも繋がった。

稟議申請アプリの運用開始から半年後、導入効果を検証したところ、従来の紙で運用していた時と比べて業務時間が約3分の1に短縮されていることがわかった。金額に換算してみると、人件費の削減額とkintoneのライセンス費用がほぼ同一になることが確認でき、アプリの運用次第で1つのアプリでも十分に投資回収可能なことがわかったため、リージョン全体に活用範囲を拡大する大きな決断に至った。

ここから大規模ユーザー拡大への挑戦が始まった。
第2フェーズはNX中国(利用者累計約1,000名)への導入だ。本フェーズでは、大量ユーザーへの拡大の課題に対して、以下3つの取り組みを行った。
1)目的・計画の共有と開発ルールの明確化
2)暗黙知から形式知への移行
3)内部監査部門とのすり合わせ
まず、「kintone導入を通して人材育成・業務効率化・ガバナンス改善を進めるプロジェクト」として社内で定義し、全体のロードマップを策定。それに基づき、アプリ開発計画を月次スケジュールで策定した。
開発にあたり、情報システム、業務部門と事業会社のIT担当でプロジェクトチームを設立した。そしてアプリ開発権限を事業会社のIT担当者へ開放し、能動的に開発する環境を整備し、アプリの乱立を防ぐルールを設定した。
また、アプリの作成手順を社内マニュアルとして公開し、またサイボウズによるアプリ開発講座や社内研修を開催し、スキルアップを図った。
さらに、ガバナンスを確保するため、内部監査部門と連携し、アプリ開発工程に内部監査部門の承認プロセスを追加。実効性の評価も開発工程に組み込み、ガバナンス向上に向けたプロセス制御を実現している。

続けて第三フェーズでは、香港・台湾・韓国への導入に着手。東アジアリージョン域内への展開で課題となった多言語対応は、kintoneの標準機能であっさりと解決した。
他地域の事業会社で作成した優れたアプリの横展開もスムーズに進み、各国の担当者へのアプリ開発手順説明会も実施。「言語の壁を越えてグループ全体で業務改善が進み、東アジアリージョン域内への展開の手応えを感じています。」(佐久間氏)
今後は、内部統制やガバナンス、業務効率のさらなる向上を目指し、アプリ連携によるプロセス管理を強化していく予定だ。顧客マスタアプリを中心に、経費申請から支払承認、銀行プラットフォームへのデータ連携など、より堅牢な情報管理にも取り組んでいく。
また、社内の取り組みをさらに活性化させるため、kintoneアプリの独自性や改善効果を評価する「K1 (kintone No.1)グランプリ」の開催も予定している。サイボウズを審査員に迎え、技術評価を依頼することで、さらなる業務改善とイノベーションを推進していく。
「kintone導入は、単なるシステム刷新ではなく、現場の意識改革とガバナンス強化、人材育成のきっかけとなりました。今後も現場主導で改善を続け、グループ全体の競争力を高めていきたいです。」と、佐久間氏は力強く語った。