日本人駐在員の新しい生活の始まりを支える海外引越サービスを展開
拠点間で顧客や案件情報を共有し“エリアの壁”を越えた連携を生む

会社概要

雅瑪多国際物流有限公司はヤマトホールディングスのグループ企業として、中国で航空・海上フォワーディング事業やロジスティクス事業、中国国内の物流事業、そして海外引越を中心とする引越サービスの事業を手掛けている。その上海分公司で引越サービスを展開する事業部がkintoneを導入したのが2014年。先行して社内で活用していたガルーンが主に総務部や人事部で有用な情報共有ツールとして評価を得ていたこともあり、各事業部門において従来は実現できなかった情報活用を一段と推し進めるべく採用した。複数の拠点と事業を持つ同社がkintone活用から得たものは何か。
引越サービスを担当する中国生活支援事業の近藤副総経理に導入のきっかけと活用メリットについてお話を伺いました。(取材:2017年2月)

今回はヤマトグループの雅瑪多国際物流有限公司にお伺いしてきました

おなじみのネコのマークを付けた車両が日本と同じように中国でも走っている


事業概要

「引越の事業は物流業ではなく、サービス業」
“人の対応力”を重視して顧客満足を追求する

2005年設立の雅瑪多国際物流有限公司は今年12年目を迎える。近藤副総経理は2010年から上海に赴任し、足掛け8年目を迎える引越畑一筋だ。主に日本と中国の間を行き来する日本人駐在員の赴任や帰任に伴う海外引越をはじめ、中国国内や中国から他国への引越を手掛けている。自ずと、その事業は日系企業による中国市場への投資の状況に大きく左右されることになる。「ご存知のように2000年代は中国に進出する日系企業が多く、また中国国内でも販売拠点や製造拠点が増えていました。それに伴い、弊社も拠点数を拡大し、日本から中国への引越の取扱量は増加する一方でした」と近藤副総経理は当時を振り返る。しかし、2012年から2013年を境に、日本から中国への取扱量と中国から他国への取扱量は逆転し、市場環境は大きく変化していたという。

日本から中国へ赴任する方の大事な引越荷物を預かる海外引越

そうしたなかで、「日本語での対応はどこの会社でもできて、すでに標準化されている」と近藤副総経理は中国における日本人向けの引越サービスの品質水準について説明する。いまや、日本人の顧客に対する日本語対応は十分な差別化にはならないというわけだ。しかし、だからこそ、「お客様に近い目線を持ち、安心して任せてもらえる“人としての対応力”が大事」(近藤副総経理)と、社内では中国人スタッフに対して顧客満足に対する意識付けを追求している。また近藤副総経理自身、いまでも顧客のお宅へ訪問して引越当日も現場に赴く業務を欠かさないという。「通訳としてではなく、あくまでサービス向上のためです。自分の額に黒猫のロゴマークが付いている気持ちでお客様に接しています」と笑顔で話す近藤副総経理は、「日本人だから、中国人だから、ということで決してはありません。実際に中国人のスタッフにもお客様から指名されるケースが増えています。私たちの仕事は物流業ではなく、サービス業だということを中国でも根付かせたい」と力強く語る。

中国でもダンボールからテープまで全てに信頼の証のネコのマークがついている

現在、中国全国に引越サービスを提供する拠点は13か所。順風を帆に受けて右肩上がりの成長が期待できる市場環境では決してないが、雅瑪多国際物流有限公司は着実にそのマーケットシェアを伸ばしているという。

導入前の課題

情報共有と活用ができない拠点間の”エリアの壁”
本社が利用するシステムは言語対応を理由に断念

「他のエリアの受注を横断的に把握する情報共有の仕組みが必要だった」。kintoneの導入を検討するきっかけを近藤副総経理はそう説明する。日系企業の進出ラッシュから一転、日本人駐在員の引越が減少傾向にある市場環境において、現在は社内でいかに効率的に情報共有し、複数拠点を構えるメリットを最大化するかが必要不可欠なのだという。

雅瑪多国際物流有限公司で中国生活支援事業を担当する近藤友彦副総経理

例えば、法人顧客で中国国内に多くの拠点を構える日系企業がいる。その顧客とは上海では取引があるが、他の拠点では取引がないことも少なくなく、そうした情報がお互いに把握してないケースがある。近藤副総経理はこれを「エリアの壁」と表現する。「同一の法人のお客様で拠点によって取引があったりなかったりする。これが弊社の各拠点でそのエリアのお客様に営業活動を行った上での結果であれば、その後の継続的な訪問やご提案の内容を改善するといった次の手が打てます。しかし、各拠点の顧客や商談、案件の情報が共有されてなく、ただ、お互いにそれぞれの活動内容を知ることができない。それが理由でアプローチすらできていない可能性があります。これが”エリアの壁”です」(近藤副総経理)。

もちろん、kintoneを採用する以前から何もやっていなかったわけではない。最も取引量が多い上海を中心に、エクセルを用いて商談や案件を管理している拠点も少なからずあった。しかし、近藤副総経理が求めていたのは、お互いの情報をよりオープンにするため、各拠点の業務を均質化することによって、定性情報を定量的に見ることができ、「どこかで何かに気付く人間がでてくる仕組み」(近藤副総経理)だ。実は、それを実現する一つの選択肢として日本本社が利用している営業システムがあったという。だが、言語が中国語に対応しておらず、また日々利用するシステムとして日中のネットワークでは十分な使い勝手が得られず断念を余儀なくされていた。

導入効果

コストと手軽さがkintoneを採用した一番のポイント
拠点間の情報連携の次は”事業の壁”を越えたシナジー

2014年にkintoneを導入して現在は顧客管理や商談管理、案件管理に活用する。近藤副総経理はその採用のポイントを「(海外の)現地法人にとって、コストと手軽さから非常に利用しやすい点」だと評価する。例えば、中国に13か所構える全拠点が利用する雅瑪多国際物流有限公司の引越サービスの事業部にとって、クラウドによって提供されるkintoneは導入時はもちろん、入力フォーマットの仕様変更や利用する機能を拡張する度に各拠点へ出向く必要がない。まさに、「広い国土に複数拠点を持つ会社の特性にぴったり」(近藤副総経理)なのだ。

では、実際にkintoneの活用で”エリアの壁”は越えられたのか。従前に比べ、商談や案件の情報をkintone上で一元管理することで各拠点の営業担当が入力する項目のフォーマットが統一され、自分が所属する拠点の情報だけではなく、他の拠点が持つ情報に格段にアクセスし易くなった。例えば、蘇州拠点がそのエリアで取引のない日系企業へアプローチする前に他の拠点での取引実績を確認する。その結果、上海拠点がアプローチ先のヘッドクォーターと取引があることに気付き、拠点間の連携を通じて蘇州側で訪問すべき担当者の紹介を得ることができる、といった具合だ。

13か所の拠点で取引実績がある顧客の情報はkintone上の顧客マスタで管理している

取扱店や顧客名、単身か家族帯同かなどの情報を案件管理のアプリケーションで一元管理している

また、「kintoneに入力された情報を眺めていると各拠点の特色が見えてくる」と近藤副総経理は言う。「法人顧客の場合、引越業者は日本本社から指定されているケースも多い。kintoneに入力された情報から、例えば成約率が高い拠点は一見良いことのようですが、見方によっては他社と競合して顧客のすそ野を広げる活動が十分にできていない可能性もあります」(近藤副総経理)。もちろん、営業担当の日々の活動のマネジメントにも活用している。案件管理のアプリケーションには、その案件を取り扱う拠点名や受け付けた時期、法人顧客であれば企業名や担当者名、実際に引越する駐在員の家族構成から引越先(国や地域)、出発日、下見日等の情報が入力される。マネジメント層は下見日(お宅への訪問日)から一定の期間が経過した案件に進捗がない場合、営業担当に状況を確認することが客観的な情報に基づいて行えるわけだ。

kintoneで管理する各拠点の取扱件数を集計して分析に活用している

実はこうした中国での利活用をきっかけに台湾の現地法人でもkintoneの利用が始まっている。また、シンガポールでも導入のニーズがあり、中国のみならず、東南アジアにもその活用が広がりを見せている。一方、先行して採用した中国においては「今後は入力する項目を増やしていきたい」と話す近藤副総経理。さらには、引越サービスの事業部で”エリアの壁”を越えて情報連携する好例を作り、次は”事業の壁”を越えて事業部間で横断的に情報連携することで全社的なシナジーを生み出したいと考えている。

今後の展望

新しい生活に気持ち良く切り替えられるサービス
中国の社員教育を支えるシステムを目指したい

雅瑪多国際物流有限公司の引越サービスの業績は、日系企業による中国への投資状況の変化に伴い、市場全体の規模が縮小傾向にあっても毎年伸長している。近藤副総経理は、「信頼されて選ばれる。そんな引越業者に中国でもなりたいですね」と今後のあるべき姿を描く。最後に「引越というのは当事者の方々からすると、とてもプライベートな部分があります。中国から日本に帰任する場合であれば、日本での新しい生活に気持ち良く切り替えられるようにサービスを提供する。それを実現するスタッフを教育し、さらにそれをシステムで支えていきたい」と抱負を力強く語ってくれた。

雅瑪多国際物流有限公司

住所:上海市長寧区仙霞路322号 鑫達大厦1701-1703室

問い合わせ先:021-5169-1533

企業WEBサイト:http://www.y-logi.cn/


業務内容:商業貨物、ロジスティクス、引越

導入製品:

主な利用用途:顧客管理、商談管理、案件管理