中国で業務用の冷蔵庫・冷凍庫・製氷機のハイエンド市場でナンバーワンを目指す
営業の前線の情報をkintoneで一元管理して経営判断の材料として活用

会社概要

業務用の冷蔵庫・冷凍庫や製氷機をはじめとするフードサービス機器をグローバル展開するホシザキグループ。ペンギンのブランドロゴに刻まれた5つの星マークは世界五大陸を意味し、文字通り、アメリカ全土からヨーロッパ全域、中近東、アフリカ、そしてここ中国を中心とするアジアで製造・販売拠点を構えている。中国では2004年に販売会社である星崎冷熱機械(上海)有限公司を設立。その同社が成長著しい中国市場の開拓を進める中、経営判断に必要な情報である営業や案件の管理にkintoneを活用している。
ショールームを兼ねたオフィスに訪問し、陳総経理と経営企画部の加藤課長にガルーンとkintoneの導入の経緯についてお話を伺いました。(取材:2017年1月)

ショールームを案内してくれた経営企画部の加藤課長と童さん

上海オフィスに設けられたショールーム

事業概要

毎年2ケタで急拡大する中国の外食産業が主戦場
強制冷却の業務用の冷蔵庫・冷凍庫で業界トップを目指す

創業1947年と長い歴史を持つホシザキグループの海外展開は早く、1981年の北米進出を皮切りに今や世界に40社弱の海外法人を設け、主力製品である業務用の冷蔵庫・冷凍庫や製氷機に加え、洗浄機器や調理機器など外食産業を中心に幅広いフードサービス機器を製造・販売している。日本国内では圧倒的なシェアを持つ製品群も多く、厨房機器においてはまさに業界の雄だ。そのホシザキグループが中国に進出したのは1998年。北京に駐在員事務所を開設して以来、実に20年が経とうとしている。

星崎冷熱機械(上海)有限公司・董事総経理の陳可亮氏

「1990年代から2000年代の中国は外食産業が毎年20~30%で成長を続け、中国地場の競合企業も少なく、非常に魅力的な市場だった」と当時を振り返る陳総経理は、北京駐在員事務所の立ち上げ当初からホシザキグループの中国展開に携わってきた数少ない人物だ。しかし、満を持して2004年に販売会社の星崎冷熱機械(上海)有限公司を設立するも、「当時の中国ではホシザキのブランド認知が十分になく、加えて外資企業に対する販売規制や法令に対する対処で苦労は絶えなかった」(陳総経理)と決して順風満帆な滑り出しではなかったという。

現在でも中国の外食産業は拡大し続けている。以前に比べると、チェーン展開する飲食店が格段に増え、直近2年でも市場は2ケタで伸長しているという。それゆえ、中国の業務用の冷蔵庫・冷凍庫や製氷機の市場規模は、いまや日本の数倍に成長した巨大な市場になっているのだ。もちろん、それに伴って中国地場を中心に価格が安い製品を展開する競合他社も増えてきている。しかし、「弊社はそうした価格の過当競争には加わるつもりはない」と陳総経理は断言する。例えば、業務用の冷蔵庫・冷凍庫には庫内を冷やす冷却の仕組みで自然冷却と強制冷却の大きく2種類に分けられる。ファンを装備して庫内を均一に冷やすことができる強制冷却に比べ、製造コストも低く、価格も安い自然冷却の製品が現在の中国市場の9割近くを占めているのが現状だ。だが、星崎冷熱機械(上海)有限公司は、「今後の中国市場は強制冷却が必ずトレンドになる。弊社は強制冷却の分野でナンバーワンを目指す」(陳総経理)と、あくまでハイエンド市場を主戦場とする戦略だ。

業務用の冷蔵庫・冷凍庫は種類が豊富。冷蔵庫の上部に見えるのが庫内を均一に冷やすファン

上部を調理するスペースとして使える業務用の冷蔵庫・冷凍庫もある

上海を中心に全国に10か所の事務所を構え、厨房機器の販売代理店や厨房設計業者を中心に数多くの代理店網を構築し、順調に事業を伸ばす星崎冷熱機械(上海)有限公司。しかし、「弊社が提供する製品は一般消費者向けではなく、飲食店を経営する事業者がご利用頂くものです。そうした方々がホシザキの製品をお使い頂くことで、より安全・安心に、さらにその先の消費者にサービスを提供できる信頼性こそが最も重要だと考えています」と陳総経理はメーカーとしての姿勢を強調する。

製氷機も利用する店舗のスペースや氷の種類によってさまざま

導入前の課題

営業現場の情報を取りまとめる業務負荷が課題
定量的に収集して経営の判断材料に活用したい

「とにかく紙が多かった」。陳総経理がそう思い返すのは、ガルーンを導入する以前の社内の申請・承認のプロセスについてだ。当時、ホシザキ上海は各種申請・承認を紙の回付で行っており、陳総経理をはじめ、中国国内を飛び回るマネジメント層が出張からオフィスに帰った時には、「デスクの上は承認や決裁の処理を待つ紙が山積みだった」(陳総経理)。それに加えて、従業員の勤怠や社内の会議室の使用状況、さらに他の事業所に勤務する従業員のスケジュールを把握する仕組みもなく、管理面において慢性的な課題を抱えていたという。

星崎冷熱機械(上海)有限公司・経営企画部課長の加藤健太氏

では、kintoneの活用前に感じていた課題は何だったのか。導入を担当した経営企画部の加藤課長は、「営業現場の情報をタイムリーかつ定量的に収集して経営の判断材料に活用できる仕組みを求めていた」と説明する。星崎冷熱機械(上海)有限公司では中国を5つのブロックに分け、それぞれにブロック長を置き、売上や案件などの営業の数値管理を行っている。しかしながら、一人のブロック長が複数のブロックを兼務することも珍しくなく、従前は各営業担当がエクセルに記入した情報を取りまとめるだけでも相当な業務負荷がかかっていた。そうして作成した資料をブロック長が携えて参加する月例の経営会議では「正確な数値の把握が難しいため、定量的かつ客観的でなく、定性的に”印象”で報告するケースが多く存在していたことが否めなかった」(加藤課長)。

こうした課題を解決するためのツールとして、いくつかの製品と比較検討し、kintoneの採用を決定。ポイントはコストと拡張性だと加藤課長は話す。「導入にあたって時間と費用がかかる特別な開発のプロセスが必要なく、また導入後の利用用途や変化に応じて柔軟かつ手軽に変更・拡張でき、管理者としてメンテナンスも非常にし易い」と加藤課長はkintoneを評価する。「スピード感をもって、私たちが抱えていた業務課題を解決するにはkintoneが最適でした」(加藤課長)。

導入効果

タイムリーに定量的な営業活動情報を把握できるkintoneで
客観的で迅速な経営判断ができる体制を実現

星崎冷熱機械(上海)有限公司では2015年にガルーンを、続けて2016年にkintoneを導入した。かねてから効率化が求められていた紙を用いた社内の申請・承認のプロセスは、ガルーンのワークフロー機能によって「決裁・承認するマネジメント層の業務負荷を大幅に軽減できた」(陳総経理)だけではなく、例えば「営業の前線のスタッフが申請のステータスを外出先からモバイルで手軽に確認できるなど、申請側の業務の効率化も図れました」(加藤課長)と、マネジメント層と現場のスタッフともにその利便性を享受している。また、営業担当を中心に外出などのスケジュールの共有と管理も容易となり、全国10か所に構える事務所のスタッフの行動予定も上海で把握できるようになった。

紙を用いた申請・承認プロセスはガルーンのワークフロー機能で業務負荷を大幅に軽減できた

全国に10か所の事務所を構えるため、各拠点の従業員のスケジュールはガルーンで管理

一方、kintoneは導入後の活用を定着させることがガルーンほど簡単ではない。星崎冷熱機械(上海)有限公司でいえば、従来のエクセルやメールでの報告に慣れた現場の営業担当に、いかにkintone上のアプリケーションに日々の情報を入力してもらうかがカギだ。加藤課長は、「実際に業務に活用する前段階の仕様づくりにおいて、現場の営業やそれらの数値を管理するマネジメント層に携わってもらい、入力フォーマットなどの仕様に対する意見を積極的に取り入れた」と活用を見据えた導入時のコツを披露する。

営業の活動報告をkintoneの統一したフォーマットで管理することで定量情報として活用しやすい

現在、kintone上で利用するアプリケーションは主に「活動報告」「出張報告」「顧客データベース」「案件管理」の4つだ。例えば導入前の営業担当者からの活動報告は、メールによる日報や定期的に提出するエクセルを利用した報告書が用いられていたが、前述のようにその情報を取りまとめるマネジメント層に相当な業務負荷がかかっていた。そこでkintoneを利用した活動報告では、日時や活動の種類、訪問した顧客名や担当名、具体的な活動内容といった項目を整理してフォーマットを作り、各営業担当が報告する情報のバラつきをなくすことで、当月の活動内容を担当毎や事務所毎、ブロック毎など見たい情報を一覧で分かりやすく確認できるようになった。これによってブロック長の業務負荷が大きく軽減しただけではなく、「営業現場の情報がタイムリーにかつ定量的に把握できるようになった」(加藤課長)という。「販売代理店に対する営業活動において、営業担当の個人の感覚に任せるのではなく、訪問頻度や活動内容を統計的に見て、アプローチが手薄な代理店に対する開拓を客観的にすぐ判断することが可能になった」と加藤課長はkintone活用の効果を実感している。

kintoneで一元管理する営業の活動報告は定量情報として分析しやすい

個別案件もkintoneで管理して経営会議で利用する資料としても用いている

今後の展望

ホシザキの価値を伝える新たな取り組みを開始
厨房器具の市場で製品を展示してブランド認知を向上

現在、星崎冷熱機械(上海)有限公司が従来から一貫して注力する取り組みの一つが、「ホシザキの価値を伝える」(加藤課長)ことだ。飲食店を中心とするユーザーはもとより、その価値をユーザーに伝える販売代理店に対してもホシザキの製品をより一層理解してもらい、販売の機会を拡大しようという考えである。そこで、全国に点在する販売代理店に効率よくアピールするため、販売業者が集まる厨房機器の市場に製品を展示し、ブランドの認知向上の活動を推進している。もちろん、こうした取り組みにおいても、営業担当からの申請やその進捗の管理にkintoneを活用する試みが始まっているという。成長著しい中国の外食産業でホシザキがナンバーワンになる日もそう遠くなさそうだ。

星崎冷熱機械(上海)有限公司

住所:上海市天目西路128号 嘉里企業中心第一座501室

問い合わせ先:021-5228-8181

企業WEBサイト:http://www.hoshizaki.com.cn


業務内容:業務用の冷蔵庫・冷凍庫、製氷機等の厨房機器の販売

導入製品:

主な利用用途:スケジュール管理、ワークフロー、掲示板、営業活動管理、案件管理、顧客データベース