脆性材料の切断加工や赤外線カットフィルターで独自の強みを発揮
工場だからこそ必要なコミュニケーションをガルーンで実現する

会社概要

広東省の東莞にある東莞田中光学科技有限公司には毎月多くの工場見学が訪れる。その目的は、脆性材料の切断加工や独自の技術を持つ赤外線カットフィルターといった製品の製造現場を視察することはもちろんだが、何よりも見学する多くの人を感動させるのが、その徹底した5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)による工場管理体制だ。なかでも業務の一環として毎朝30分行う掃除は同社の5S管理に対する真摯な姿勢を如実に表している。自ら毎日トイレ掃除にあたる石野総経理は、掃除は社員同士のコミュニケーションを促進し、かつ「モノづくりの感性を高める」と話す。
今回は製造業の最前線である工場で、何よりもコミュニケーションを大事に考え、あらゆる社内情報をサイボウズのガルーンで共有することで、”工場におけるコミュニケーション”の促進を実践する同社にお話を伺いました。(取材:2016年4月)

事業概要

東莞田中光学科技の商品は工場そのもの
徹底した5S管理の実践でお客様を感動させる

東莞田中光学科技の主力事業にはガラスやセラミック、水晶、フェライト、サファイアといった脆く壊れやすい脆性材料の切断や加工に加え、近年では車載カメラなどで一層需要が伸びるレンズ部分の赤外線カットフィルターがある。同社は、日本の光学機器メーカーであるトプコン社(東証一部上場)が東莞市に製造拠点を構える際、その光学ガラスを加工する技術力の高さを買われて2001年に中国へ進出した。しかし、従来からの切断加工の分野でみると、いまや中国でも民営から国営まで競合他社となるローカル企業が星の数ほどある。ただ、東莞田中光学科技の強みは、そうした設備さえ導入すれば製造して提供できる製品にだけあるわけではない。石野総経理は「私たち東莞田中光学科技の商品は、ここの工場そのもの」と説明する。その言葉が意味するのは、5Sの徹底による工場管理体制だ。

石野総経理の中国駐在歴は2回。2004年から工場長として6年、2011年からは総経理として現在までで都合10年を超える。座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。企業経営、特に工場管理をいかに実践するかを常に考え、日本的な経営手法を中国の最前線で実践している。

「商品が安いだけではダメ。良い商品を作っていても、不良品が多く出ては意味がない。お客様に納める商品を製造する現場、つまり工場が清潔で働く従業員が生き生きしてこそ、多くの方に弊社の工場のファンになって頂いて、継続的にお取引ができ、また必要になった際に声をかけて頂けると信じています。”お客様を感動させる工場”が私たちの商品そのものなのです」(石野総経理)。では、その徹底した5S管理とはどのようなものだろうか。それを端的に表す取り組みが全社員で行う工場内の掃除だろう。東莞田中光学科技では、毎朝の始業時間8時に最初の業務として全社員で工場内を徹底的に掃除する。それぞれに担当エリアが割り当てられているが、その範囲内を”なんとなく掃除する”のではなく、エリア内でその日に掃除する特定の場所や物を決めて、”これでもか”というほど念入りに行うのが東莞田中流だ。

毎朝30分の掃除は5Sの一環だけではなく、社内のコミュニケーションを円滑にする効果もある。
トイレ掃除(写真左)は石野総経理が担当する。

朝7時半から始める社内勉強会は週2回。
お手製のハンドブック(写真右)に書かれた「仕事の達人の心得」を石野総経理が従業員に教える。

同社が現在注力する製品である赤外線カットフィルターは、一般的なデジタルカメラのほか、監視カメラや車載カメラに搭載される部材だ。精密機械に使用されるだけに、その製造現場はいやがおうにも高いクリーン度が求められる。しかし、石野総経理は掃除はただ単に設備を綺麗に保つだけのものではないという。「毎日同じエリアの一部分に意識を集中して徹底的に掃除することで、”ここの塗装が剥げてきたな”とか”ここにあるはずのモノがないな”といった違いに気付く感性を高めることができます。これはモノづくりの過程において発生する様々な異変や兆候に気付く感性につながるのです。軽微な不良がラインに流れてきたら、自分の担当かどうかは関係なく、それに気付き、未然に防ぐセンスを掃除で磨くんです。朝一で集中力を高めて公私の気持ちを切り替えるスイッチにもなりますしね」(石野総経理)。

導入前の課題

中国人の情報を自分だけに閉じるカルチャーが課題
業務をペーパーレスにしたいが、どうすればいい?

東莞田中光学科技の従業員は現在70名ほど。デスクワークを業務とする一部のホワイトワーカーを除けば、そのほとんどが工場のモノづくりの現場で働く社員たちだ。そうしたいわゆる典型的な製造業でありながら、5S管理と並んで石野総経理がとても重視しているのが、社内のコミュニケーションの徹底だという。実際に東莞田中光学科技の工場内の通路の壁には、従業員一人一人の目標や部門毎の成果、売上や経費、それに基づく利益目標といった情報が非常に多くかつ整然と公開されている。「工場には”工場のコミュニケーション”がある」。それが石野総経理の信条だ。

工場内の通路には従業員の目標をはじめ様々な社内の情報が整然と掲示されている。

「モノづくりをいかに間違いなくスムーズに行うか、それが工場のコミュニケーションです。例えば、お客様から頂いた仕様書や図面は特定の部門でだけ共有するのではなく、技術部門から生産管理部門、さらに財務部門に至る全ての部門で共有することが重要です。もし、途中で仕様書に変更が発生した場合、その作業工程に直接携わる部門だけで情報を閉じていると、万一担当部門が見過ごした場合、他部門が気付いてあげることができません。逆に情報を全社で開いておくと、不良品を出すことを全社で防ぐことができるわけです」(石野総経理)。しかし、中国人の情報に対する考え方は、自分の情報は自分のものというのが一般的だ。顧客情報やノウハウは自分の引き出しに入れてしまい、全員で情報共有することに抵抗を感じることが少なくない。トラブルが発生した際、”言った、言わない”の問題が必ずといっていいほど起こる原因の一つともいえる。

導入効果

社内メールは一切禁止、全ての情報はガルーンに
ペーパーレスを実現して5S管理を一段と徹底できた

5Sによる工場管理体制に勝るとも劣らず、ガルーンを導入してからの東莞田中光学科技の情報共有の徹底ぶりはさすがだ。一例を挙げると、ガルーンの機能の一つ「スペース」の利用がある。スペースは所属する組織に関わらず横断したメンバーでプロジェクトや案件などの情報を管理でき、限られたメンバーでの公開・非公開の設定が可能な機能だ。東莞田中光学科技では、部門だけではなく、顧客から外部の協力会社に至まで1社毎に全てこのスペースを設け、仕様書や図面のみならず、製品の製造過程に関わる外部とのメールまであらゆる情報をこのスペースにアップして公開する。非公開の設定は一切行わず、全社員があらゆる情報を確認することができるという。「仕様書や図面を社内や協力会社とガルーンを通じて情報共有することで、お客様のご要望以上の製品を作ることができる」と石野総経理は自信を持って話す。

ガルーンによる情報共有を徹底する一方でなくなったものがある。社内メールがそれだ。従来の限られた従業員同士による社内メールを全て禁止し、情報が特定の部門だけで閉じないようにする徹底ぶりだ。これも石野総経理の目指す”工場のコミュニケーション”に欠かせない取り組みともいえる。そうすることで、「人に仕事がつくのではなく、仕事に人をつけることができる」(石野総経理)のだ。ガルーンを利用することで、中国人のカルチャーによって属人的に抱え込まれていた情報をうまく共有させることに見事成功している。

「ガルーンは社内の情報共有が簡単にでき、従業員同士のコミュニケーションを円滑に図ることができる」
と品質保証部の劉部長(左)。ガルーンによってペーパーレス化の実現。デスクは整然と整理整頓されている(右)。

もう一つの課題としていたワークフローはどうか。石野総経理は、「ガルーンを導入して私が一番に飛びついたのは、やはりワークフローの機能です。とにかく紙による申請をなくしたい、ペーパーフリーにしたい、と考えていましたので」と強調する。ガルーンでは出張や経費精算をはじめとする各種申請・決済が行えるワークフローの機能があり、今では紙による全ての業務を撤廃してガルーンで完結させている。決裁する石野総経理の負荷が軽くなっただけではなく、いつでもどこでも決裁できることから申請する従業員にとっても業務がよりスムーズになったという。また、紙による業務を一切なくすことで、帰宅時のデスクの上には電話とパソコン以外は置いてはならないというルールも厳守できるようになり、5S管理にも大きく寄与している。

部門、取引先の全てにスペースを設けて情報を一元管理している

社内メールは全て禁止して共有すべき情報は全てガルーンにアップする

出張や購買など各種申請と決済のワークフローもガルーンで完結させている。
これによって紙の回付による従来の方式を撤廃してペーパーレスを実現した。

各ドキュメントも全てガルーンで一元管理している。

今後の展望

赤外線カットフィルターで世界シェア40%を目指す 製品力を高めてカメラ製品の全行程を担える工場に

従来の切断加工の分野だけで今後を考えると決して大きく伸びる市場ではない。しかし、東莞田中光学科技にはそれらの分野で長年培われた技術から新たな競争力を持つ製品がある。それが2010年から中国でも展開する赤外線カットフィルターだ。特に今後大きく伸長すると見込む車載カメラの分野では、今後5年間で世界シェア40%を目指すという。「事故防止や自動運転などに利用される車載カメラに搭載する部材なだけに、単に安くて良い製品だけでは採用されないと考えています。やはり、そのモノづくりの現場の管理体制が問われてくる。私は総経理として赴任した2011年から、その体制とそれを支える“人財“をコツコツと育てて作ってきました」(石野総経理)。
「さらにその先10年は?」という質問に「一部分の材料加工だけではなく、カメラ関連製品の全工程を担える技術力と製品力を生み出していきたい」と力強く話す石野総経理。その挑戦と毎日のトイレ掃除はまだ当分終わりそうにない。

〈工場見学のご案内〉
東莞田中光学科技では工場見学を受け入れています。中国に構える工場として、日本が誇る5S管理をいかに実践しているのかを実際にご覧頂き、中国人従業員の方々にその意味を理解して頂く場をご提供しています。総経理をはじめとする管理層の方々のみならず、実際に工場で働く中国人従業員の方々とご一緒に見学にお越しください。詳細はお問い合わせください。

東莞田中光学科技有限公司

住所:広州省東莞市石龍鎮新城区富民路8号

TEL:0769-8618-5461

企業WEBサイトhttp://www.tanakagiken-china.com/


業務内容:ガラス、セラミック、水晶など脆性材料の切断加工
赤外線カットフィルターの製造・販売

導入製品:Garoon

主な利用用途:ワークフロー、プロジェクト管理、スケジュール管理、ファイル管理